移住先での寂しさを癒したハンドメイドが、仲間づくりにつながった。福島ならではの素材を生かし自分らしくチャレンジ&ステップアップ!『松本悠佳さん』

松本悠佳さん/ハンドメイド作家「UKA STYLE」

田村市船引町

Handmade

ハンドメイド作家「UKA STYLE(ユーカスタイル)」として活動する、松本悠佳(まつもとゆうか)さん。富山県で生まれ育ち関東の大学に進学、結婚を機に夫のご実家である田村市に転入した松本さんは、2017年頃からハンドメイドの活動をスタートしました。ご自身の好きなことを生かしながらチャレンジを積み重ねるスタイルや、チャレンジショップふらっとに出店した経緯などについて、お話を伺いました。

苦しい気持ちを忘れたくて始めたハンドメイド

私は現在フリーランスで、会津木綿や水引、折り鶴といった和の素材を取り入れたアクセサリーや小物作品の制作・販売、ワークショップといった活動をしています。販売とワークショップは、各地で開催されるイベントに出店して行うことが多いですね。さらに週1回、千葉県の大学で非常勤講師として体育実技を教えています。実は私、体育会系なんですよ。体を動かすことが好きで、大学と大学院ではスポーツ科学や運動生理学について研究していました。

本格的にハンドメイドを始めたきっかけは、結婚後の新生活のストレスでした。田村市に来たばかりの頃は知らない土地で周りに友人もおらず、それまで1人暮らしだったこともあり、慣れない日常に苦しさを感じていて。辛い思いを忘れたい一心で、刺繍のキットを買って自分の部屋で作ってみたところ、思いきり没頭したことで気持ちが晴れ、とても癒されたんです。目の前でかわいいものができあがる嬉しさもあいまって一気にハンドメイドの魅力にはまり、道具を一式揃えて作品を作るようになりました。

長野に住む夫の親戚を訪ねた際に知った水引。独学で作り方をマスターし、アクセサリー販売やワークショップを開催

地刺しやこぎん刺し、ミシン作品やレジンなど、いろいろ作りましたね。和のアクセサリーに興味を持った理由は、嫁入り道具で持参した着物を自分で着てみたいと、着付けを習い始めたことからです。作品が手元にたまり販売を考え始め、作家としての初出店はフリーマーケット。出店自体は緊張しませんでしたが、自分が作った作品が売れるかどうかについてはドキドキでした。

せっかく住んでいるんだから、地域の素材を生かしたい!会津木綿との出会い

持参した着物は、訪問着など特別な時に着るものが多く、普段着られるものがほしいなと思いました。福島には会津木綿という伝統工芸品があると知り、せっかく住んでいるんだからこの土地で育まれた素材を生かしたいと、会津の着物屋さんに行って、会津木綿の反物から着物を仕立ててもらいました。カラフルでかわいいものが好きな私は、着物屋さんで種類豊富にずらりと並んだ会津木綿に心掴まれました。今では端切れや1mといった少量から会津木綿を購入し、作品を作っています。

会津木綿を素材としたブローチ。生地は会津若松市のお店で購入し、イヤリングやピアス、クロスターバンなども制作・販売している

市販の会津木綿のおみやげは高価ですが、私は手に取りやすい価格に設定しています。実は周りで会津木綿を知っている方が少なかったのですが、いざ売り始めると、「私も好きなんです」というお客様や出店者の方に出会うことができました。好きなものを共感し合えるって嬉しいですよね。着付けを習ったり出店したりする中でハンドメイドのコミュニティにアクセスでき、一緒に話ができる仲間や友人ができました。人とのつながりからさまざま機会も生まれて、そこに乗っかることも楽しんでいます。

売れる時も売れない時もある。冷静な振り返りと実践を繰り返しながら、収穫は自分で決める

ハンドメイド、出店、大学講師…というと大変そうに聞こえますが、日々のペースは大体決まっています。講師の仕事は大学院時代からやっており、千葉市まで通うのも私にとっては週1回の楽しい息抜き。自営業である夫の会社は本当に必要な時だけお手伝いしています。とはいえ、家族の事情など毎日何かしら細かい予定があるので、作品は平日夕方や夜、出店が無い休日に制作しています。普段は「布をカットする」「パーツを接着して乾かす」など、工程を分けて素材を作りためる作業を中心に行い、イベント出店が近づいたら在庫確認をして、一気に作品として仕上げていきます。

松本さんの作品は色や種類が豊富。「選ぶ苦しさと楽しさを堪能しているお客様を見ているのが楽しいです(笑)」

出店は、制作時間や体力も考慮しながら月2回くらいのペースです。イベントごとにテーマや売れ筋、お客様の層も異なるので、どの作品を目玉に据えてディスプレイするかは毎回考えながら決めています。難しいですよね、これをやればOKという正解が無いんですよ。だからこそ「他の作家さんはどうしてるかな」といった、日々の情報収集を大事にしています。

今できる最大限の準備をしても、売れるとは限りません。出店したばかりの頃は「私の作品が悪いから売れないのでは…」と落ち込むこともありましたが、天気が悪かったり、来場者の数自体が少なかったりと、売れない原因はさまざま。冷静に振り返り、失敗したと思ったらどんなやり方があるかを考え、次の機会に実践しています。大学院の研究で当たり前にやっていた、「結果を客観的に振り返り、次にどうするかを目的に照らし合わせて考える」という営みが今につながっているのかもしれません。

売れない場合もあるからこそ、出店時はお金以外で何かしら持ち帰るよう心がけています。ほかの出店者の方と情報交換をしたり、気になっていた作家さんのブースを見て回ったり、キッチンカーでおいしいお昼やおみやげを買ったり。自分なりの楽しみがあることは心の余裕につながりますし、振り返る際に「収穫があった」と位置づけることができます。結果の良し悪しは売上だけで判断できるものではないと考えていますが、同時に出店のブース料くらいは売りあげたいという気持ちも、手離さずにぐっと握っています。

天候や季節など、出店の環境は実にさまざま。お客様や出店者の方とのコミュニケーションは、松本さんにとってお金で代用できない収穫

出店し続けていると「水引のワークショップ講師をやりませんか?」といった、自分では考えてもみなかった機会にめぐりあうことがあり、そんな時はとにかくやってみるようにしています。自分にとって何かしらステップアップになるチャンスだし、きっと楽しいから。飲み会に誘われたら必ず行く…みたいなイメージですね、好奇心旺盛なんです。緊張もあるけど、呼ばれているうちが花だなと思っています。

こういう場所を待っていた!田村市のチャレンジショップふらっと

ふねひきパークの2階に空きテナントができて長いことが、ずっと気になっていました。ある日通りかかると、チャレンジショップを作るためのアイデアワークショップ開催のチラシが目に留まりました。「今後この場所はどう使われていくんだろう」と興味があったので、ワークショップに参加してみました。

使い方のアイデアを紙に書いて貼り出しながら、野菜を販売されている方や就労支援施設さんなど、さまざまな業種の方と一緒にお話しました。後日空きテナントを通りかかったら、今度はふらっとオープンのチラシが置いてあったんです。事前説明会でハンドメイド作品の販売もOKと聞き、待ってました!という気持ちでした。これまでも展示販売ができるレンタルボックスを利用したり、本屋さんや整骨院さんに作品を置いていただいたりしましたが、市内や近隣地域ではそうしたお店の数自体が多くなく、出店となれば福島市や郡山市まで行かなくてはなりませんでした。家族の介護をしていた時期を経たこともあり、地元中心に活動したい、近場で何かできないかなと思っていたので、ふらっとができてくれて本当によかったです。

グランドオープンの1ヶ月後に、近隣地域の作家さんと6人で、10日間連続出店するというイベントをやってみました。ふらっとは使い方が自由ですが、私1人で利用するには広く感じたのと、いろいろな種類のお店があるほうがお客様も楽しいのでは?と思い、グループ出店で販売とワークショップを行いました。

売上だけじゃ続けられない。活動のモチベーションとUKA STYLEのこれから

「忘れたい」と思って始めたハンドメイドですが、今は作品が手元でできあがっていくことや、自分の好きなことを生かし誰かに喜んでいただける仕事ができることに喜びを感じています。フリーランスとして活動するために売上は大事ですが、私は自分が楽しいと思えなければ、売上があっても続けられません。会津木綿を好きと言ってくださるたったお1人や、作品を気に入ったからと何度も足を運んでくださる方に出会えることが、とても励みになっています。

これからも県内を中心に、ハンドメイド作品の出店を続けていきます。ふらっとには月1回の頻度で出たいですね。他の方の作品や展示も楽しみたいので、もっとふらっとの出店者が増えてほしいです。まちの方にも「ここはいつ来ても何かやってるな」と思っていただきたいですね。まだオープンして半年ほどですから、ふらっとの存在や機能が知られていくにつれ、景色が変わると思っています。

ふらっとで開催された「マルシェで出店してみたい」という初心者の方向けのワークショップに先輩出店者としてゲスト参加。松本さんの存在が、ふらっとの次のステップを作る

「お店は無いの?」と聞かれることがあるのですが、今後は自宅の敷地内にアトリエ兼販売拠点を作りたいなと考え中です。場所を借りると、あらかじめ決めた日時に必ず開けなくてはいけないことや賃料に心配があります。今のように出店もやりたいし家族の予定もあるので、自分のペースで開けられる場として作りたいですね。作品をずらっと並べれば在庫確認にもなるし、何よりたくさんある様子を、私が見て楽しみたいんです。これからも自分が続けられる工夫をしながら、ステップアップしていければと思います。

UKA STYLE(ユーカスタイル)

Instagram:https://www.instagram.com/ukastyle884/

田村市のチャレンジショップふらっと

住所: 福島県田村市船引町船引字原田9 ふねひきパーク2階
営業時間:出店者ごとに異なります(最新情報はこちら)
駐車場:あり
運営:【委託元】福島県田村市【受託】株式会社ジェイアール東日本企画・一般社団法人Switch
HP:https://tamura-iju-housing.com/flat
お問合せ:フォームよりお問い合わせください。
※ふねひきパークへの直接のお問い合わせはお控えください。
※出店希望の方はこちらをご覧ください。

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