移住相談窓口 相談事例 中村雅美さん

中村雅美さん

常葉町

UJI

Q.移住しようと思った背景を教えてください

私は元々田村市滝根町で生まれて、20歳までそこで過ごしました。東京での生活に憧れを持っていたので、高校を卒業後はアルバイトでお金を貯め、東京にあるホテルのレストランやカフェで働きました。元々「働くなら自分が楽しいと思えるところで働きたい」という想いがあり、好きな接客業を極めようと思っていたんですよね。

しばらく東京で働いていましたが、親と同居するために田村市に戻ることになりました。まだまだやりたいことはたくさんあったのですが、当時は「親は自分が見るものだ」そう思っていたんです。そして、田村市に戻ったのが2011年の1月。その2か月後の3月に、東日本大震災が起きました。

震災を機に、それまでの考えは一変しました。人はいつ死ぬかわからない。それなら、行きたいところに行き、やりたいことをやって、自分が楽しいと思える人生を歩みたい、そう思い家族に伝えました。

その後はずっと行きたいと思っていた長野県のリゾートホテルや栃木県のカフェで働きました。特に長野県は大のお気に入りで、自分の終の棲家は長野にしよう、そう思っていたくらいです。

大好きな長野の地で

Q.なぜ田村市に移住(Uターン)することを選んだのですか?

栃木県にいた時に夫と出会い、結婚しました。私ととても価値観や考え方が似ていて、いずれはどこか自然の多い場所に移住し、自給自足の生活をしたいねという話をよくしていました。

ただ、その移住先を決めるのが大変でした。私の好きな長野県に2人で行ってお試し居住してみたり、夫の実家である青森県に住んでみたり。それでも、2人ともがピタッとくる場所は見つかりませんでした。そんな時、夫が「(福島県)田村市は?」と言ってきたんです。

それまでも何度か夫から移住先候補として田村市の名前が挙がることはあったのですが、正直、私の中では「田村市」という選択肢はなく「それはないなぁ」と断り続けていました。ただ調べていくうちに、田村市は移住者への補助金が充実していることが分かったんです。同時に夫からは田村市の物件を「これどう?」と何軒も見せられました。

段々と「うーん、田村市もありかもなぁ」と思い始めたていたところ、決め手となったのが、理想の家との出会いです。夫が見つけてきた空き家物件が、まさに私の理想の家でした。

木の温もりを感じられる1戸建てで、吹き抜けの広いリビングには薪ストーブがあります。町中から離れた山の上にあり、周囲は自然に囲まれた場所です。

私は「この家だったら田村でいいよー!」と答えました。

移住の決め手は理想の家との出会い

Q.移住相談窓口(空き家の窓口)をどのように利用しましたか?

田村市が移住先候補として挙がってきた頃から、田村市の移住関連のサイトはくまなく見ていました。そのうちの1つのサイトに夫が見つけた物件も載っており、田村市の空き家の窓口の連絡先が載っていました。まずは現地を見てみないことには始まらないと思い、連絡を取り、早速見学の調整をしてもらったんです。

見学を楽しみにしていたのですが、ここでまさかのハプニングが起きます。見学まであと数日という時になって、空き家の販売が取り下げられたと連絡を受けたんです。もうショックですよね。

窓口の担当者は話し方も丁寧で、とても親切に対応してくれたんです。販売が取り下げられた時も、色々フォローしてくださいました。ただ、やっぱり田村市への移住の決め手がこの物件だったので、「じゃあやっぱり田村市じゃなくてもいいかなぁ」そんな風にも思い始めました。

そんな時、田村市に住む姉から「0円物件」を取り扱うサイトにあの空き家が掲載されていると突然連絡を受けました。もうびっくりですよね!!早朝にそのサイトを見て、そのまま申し込みました。結果、100人ほどいた申込者の中で1番最初の申し込み。無事にこの家を手に入れることができました。

Q.田村市ではどのような生活を送っていますか?

この理想の家は、標高600m程の山の上にあります。夜になると、お隣の家の灯りが下の方にかすかに見える以外、周囲にはほとんど光がありません。それくらい、自然に囲まれた場所なんです。それが良くて住もうと思ったのですが、やっぱり住んでみないとわからないこともありました。

憧れだった薪ストーブのある吹き抜けのリビングは、寒いんです。冬は寒すぎて、基本は8畳の部屋で家族みんな過ごしています。虫も多くて、秋から冬にかけて家の隙間からはカマドーマが侵入してきます。家に帰るとまず、カマドーマ退治から始まり、1日で100匹近くをやっつけます。最初はちょっと嫌でしたけど、これだけやっていれば慣れますよね(笑)

そんな想定外もありましたが、静かな環境で見る一面の星空は、何にも代えることはできません。真っ暗な家の周りでは、星も月もとてもきれいに見えるんです。

夫は欲しかった狩猟の免許を取ったり、2人の夢だった飲食店オープンに向け準備をしたりと、ここでの生活を楽しんでいます。先日夫から「田村に来てくれてありがとう」と言われました(笑)普通逆ですよね。

子どものひな祭りは自宅の庭で

Q.子育ての環境については、いかがですか?

子どもには「自分の力で生きる術」を身につけてほしいなと思っています。今の世の中はとても便利ですが、震災が物語るように、世の中はいつ何が起きるかわかりません。突然電気やガスが使えなくなることもあるし、スーパーに食品が並ばなくなることがあるかもしれません。

電気を極力使わないために、家ではご飯は炊飯器ではなく、鍋を使って炊いています。今年は畑で野菜などを育て、少しずつ、自給自足の生活へと近づけていきたいと思います。

「便利」は当たり前ではないということを、子どもがこの生活を通して知ってくれたらうれしいですし、それを知るには、今の環境はとても良いと思います。

家族で農業体験をする中村さん

Q.これから田村市でやりたいことはありますか?

「自分たちのお店(飲食店)をもちたい」というのが、私たち夫婦の夢です。接客や人をもてなすことが好きなので、自分たちの好きな料理やお酒を提供するカフェを開こうと、現在準備中です。

そもそも田村市に移住しようと思う前は「田村市には行きたいと思うようなお店もないしなー」と思っていたのですが、今は「無いなら自分で作ろう!」と考えを変え、理想のお店のオープンに向け、着々と準備を進めています。