20代で老舗肉屋を継承。市が行う人材育成塾の仲間に支えられ、今では大人気のBBQ事業を立ち上げ発展し続ける『川合達也さん』
川合達也さん/川合精肉店 社長
田村市常葉町
Butcher
田村市で誰もが知る肉の専門店「川合精肉店」。戦後間もない頃に始まった老舗の精肉店を守るのは、この家で生まれ育ち、20代で父親から事業を引継いだ川合達也さん。
大手スーパーが台頭する中、新しいアイデアや精肉店の強みを存分に生かしたオリジナルの手法で家業を守り続ける川合達也さんの想いに迫る。
肉が大好き!なんとなく、自分が継ぐのかな~と思っていた家業
川合さんが生まれたのは、田村市常葉町にある商店街のお肉屋さん。3人兄弟の末っ子だったが、小学生の頃からお盆や正月、ゴールデンウィークなどの繁忙期にはよく店を手伝っていた。また兄弟が家業とは別の道に進んだこともあり、いずれは自分が店を継ぐこともあるのかな、とは薄々思っていた。
家を継ぐかどうかは別にしても、川合さんは子どもの頃から肉が大好きだった。しゃぶしゃぶやすき焼きが夕食に出る日は、父親が「この肉を使え!」と料理に合うおいしい肉を持ってきてくれていた。そのありがたみは、大学に進学し外食の機会が増えると自然と感じるように。「やっぱりうちの肉はおいしいんだ」そう実感することも増えた。
大学を卒業後は銀行の総合職として働いた。しかし、転勤や移動の多い仕事にいつしか「この仕事、自分じゃなくてもできるんじゃないか…」と感じるように。
「自分にしかできない仕事ってなんだろう…?」考えた時に浮かんだのは、やっぱり実家の精肉店だった。自分が生まれ育った活気ある商店街の肉屋。幼い頃から手伝っていたこの店を、今度は自分が守る番だと、実家に戻ることを決めた。
店を継ぐことを父親に伝えた際は「わかった」という一言だったが、後々周りから聞いた話では、息子が店を継ぐことをとても喜んでいたそうだ。
父親との急な別れ。「もう無理かもしれない…」支えてくれたのは、周りの仲間たち
そうして26歳の時に実家に戻った川合さん。
1年目は調理師の専門学校に通いつつ、土日は店に出るという生活だった。
これから少しずつ経営のノウハウを学ぶつもりだった。しかし実家に戻り1年程が経った頃、父親が病気になり、そのまま帰らぬ人となってしまった。突然の出来事だった。
「正直、しんどかったです。経営や経理も基本は全部父がやっていたので、何もわからない状態でした」
長年働いている従業員に助けられながら、何とか目の前の業務をこなす日々。そんな川合さんを励ましてくれたのは、当時通っていた田村市産業人材育成塾(通称 育成塾)の仲間たちだった。
店を守るために。老舗精肉店のこだわりを最大限生かした新たな事業開発
育成塾とは、次世代の産業人材の育成を目的として、塾生が事業構想の作成・磨き上げを行う田村市の事業。課題の多さや自分と1から向き合うことが求められる厳しい面談で有名なこの育成塾の、川合さんは1期生だ。
「実家に戻った頃、田村市ではすでに大手スーパーが台頭していました。人口の減少や高齢化によって肉の消費量も減っています。これまで通り『精肉店』だけで生き残るのは難しいかもしれないと感じていました」
川合精肉店が提供するのは、主に福島牛やうつくしまエゴマ豚など福島県産の精肉、ブランド肉。その中でも上質なものだけを熟練の職人と共に店主自らが目利きし、提供している。それは先代である父親の考えでもあり、川合精肉店のこだわりでもあった。
そんな老舗精肉店としての本質は今後も守りたい。その上で、店を継続させるためには新たな取り組みを行う必要があった。そして考えたのが、日本BBQ協会が提供するBBQを元にしたオリジナルBBQの提供だ。
新たな事業構想の実現へ。BBQ大好きな肉のプロフェッショナルが提供する「LIVE BBQ」
「元々BBQは好きでしたけど、どちらかというと『みんなでワイワイガヤガヤできればいいや』という感覚でした。だから日本BBQ協会が提供するBBQを初めて体験した時は衝撃でした。肉はかたまりでドーンと焼いて、野菜も切らずに丸ごと焼きます。色んなテクニックを使うことで、スーパーで買った食材が『こんなになる!!?』っていう感じで本当においしくなるんです」
肉屋の自分ですら知らない数々のテクニック、一般の人はもっと知らないはず。ぜひもっと広めていきたい!川合さんは育成塾を通して、BBQを川合精肉店の事業の一環として新たに提供することを決めた。
「自分がやるBBQは『食×エンターテイメント』です。かたまり肉が焼けた時の感動、蓋を開けた時の湯気、香り、肉屋だからできるおいしい肉の見分け方や焼き方の説明、見て、食べて、聞いて、香ってと、五感をフルに使ったBBQは『まるでショーみたいだね』とお客さんに言われたことがきっかけで、LIVE BBQという名前が付きました」
実はこのLIVE BBQ構想を当時健在だった父親に話したところ、反対された。「そんなのやめとけ。うまくいくはずない」と。育成塾の講師陣からも最初は反対された。
そんな中応援してくれたのは、やっぱり育成塾のチームメイトだった。
「実際に自分が提供したBBQを体験した仲間たちは『たっちゃん(川合さんの愛称)のBBQいいじゃん!』『またやりたい!』そう言ってくれました。育成塾の最中に父が亡くなったこともあり、彼らの言葉が無ければ、LIVE BBQは実現していなかっただろうなと思います。彼らがいて、自分は運がよかったと思います」
「やりたいことを口にする」ことで、次々と新たな取り組みが実現
調理師免許を持つ川合さんが考案するBBQのメニューは、ハーブオイルでマリネしたラムチョップ焼きや、シャインマスカットとマスカルポーネのデザートなどオシャレなものから、肉の塊や切っていない長ネギ、白菜、皮付きのパイナップルを丸々どーんと焼くような豪快なものまで、本当に参加者を楽しませてくれるものばかり。
おまけに準備から片付けまでやってくれるとあって、その人気は口コミで広がった。新型コロナウィルスが流行する前は年に60回ほどの注文があり、土日はほとんどLIVE BBQに赴くような日々だった。
「今でも週に1回はBBQをしています。結局自分はBBQが好きなんですよね。BBQなら24時間でもできると思います(笑)」
その後も川合さんは、ECサイト(ネットショップ)の立ち上げや、ふるさと納税返礼品としての肉の提供、「こだわりをとことん追求し、それを目当てにお客さんが足を運んでくれるような特別なお惣菜」として、牛肉を100%使用した「牛めんちカツ」の開発など、精力的に新たな事業に取り組んだ。
そうした活動はメディアでも度々取り上げられ、それに合わせて川合精肉店の知名度も上がっている。
「市外、県外から『牛めんちカツ買いに来たよー』とお客さんが立ち寄ってくれることもあります。LIVE BBQは郡山市やいわき市などからの依頼が多いです。『川合精肉店』としての基盤は残しつつ、こうした宣伝活動を通して、少しでも田村市、そして川合精肉店に足を運んでもらいたいですね」
そのためにも、今後はキッチンカーを利用したお惣菜の販売や、LIVE BBQの認知度のさらなる向上を目指していきたいと川合さんは意気込んでいる。
移住希望者へのメッセージ!
やりたいことがある人は、その想いを口にすることが大切だと身をもって経験したという川合さん。
「どんどん発信していくことで、周りもついてきてくれます。応援してくれる人が現れると、今度はそれが自信につながるんですよね。自分1人では難しいことも、仲間がいればがんばれます」
これからしばらくは本格的な寒さが続く冬。ぜひ川合精肉店の熱々ジューシーな牛めんちカツや、福島牛を使った絶品しゃぶしゃぶで身体を暖めてもらいたい。
川合精肉店おすすめのお肉を食べてみたいという方は…こちらから↓
https://www.furusato-tax.jp/feature/detail/07211/18028
川合精肉店
【常葉店】
住所:福島県田村市常葉町常葉字荒町66
電話: 0247-77-2222 FAX:0247-77-2223
定休日:水曜日
営業時間:8:30~19:00
【船引店】
住所:福島県田村市船引町東部台3丁目64
電話:0247-73-8529
定休日:木曜日
営業時間:10:00~18:30
【共通】
Webサイト:https://kawaai.net/
オンラインストア: https://kawaainet.stores.jp/