神奈川から移住し、DIYでキャンプ場をオープン!満天の星が輝く「camp circleきずな」を運営する『榊原朋恵さんと長谷川敬三さん』
camp circle きずな
滝根町

自然に囲まれた豊かな暮らしに憧れ、神奈川県から田村市に移住した榊原朋恵さんと長谷川敬三さん。
広大な土地と民家を購入し、自ら内装や外装の工事を手掛け、2024年春にキャンプと民泊が楽しめる「camp circle きずな」をオープンしました。
気さくで明るく、柔らかな笑顔が印象的な二人。
そんな二人が大切にしているのは、「人とのつながり」です。
ここでのキャンプ体験を通じて、移住者や地域の方々がつながるきっかけになればーー
そんな想いが込められています。
今回は、お二人に出会いや移住のきっかけ、そして起業までの経緯についてお伺いしました。
建設関係の仕事で出会い、人生のパートナーにーー。二人の共通の趣味は「キャンプ」
東京都渋谷区出身の朋恵さんと、神奈川県横須賀市出身の敬三さん。二人の出会いは「建設関係の仕事」でした。40代で建設関係の会社に勤め始めた朋恵さん。そこで、一人親方の大工として働いていた敬三さんと出会います。「キャンプや自然が大好き」という共通点を持つ二人はすぐに親しくなり、やがて人生のパートナーになりました。
幼い頃からの「田舎暮らしへの憧れ」を叶えた、田村市への移住
渋谷区出身の朋恵さん。幼い頃から、田舎暮らしに憧れがあったそうです。その原点は、幼少期の夏休み。静岡にある祖父母の家に集まり、従妹たちと楽しく遊んだ記憶が強烈に印象に残っているのだとか。そんな経験から「いつかは田舎で暮らしたい」と漠然と考えていた朋恵さん。一方で、長年大工をしてきた敬三さんも「このままで終わりたくないな」と感じていたといいます。
定年を目前に、まずは飲食店の経営を考えた二人。しかしその頃、新型コロナウイルスの感染拡大がはじまりました。外部の影響を受けやすい飲食業はリスクが高いと判断し、断念します。
そこで思い付いたのが、共通の趣味である「キャンプ」でした。すぐにキャンプ場がオープンできるような1000坪以上の広大な土地と、自分たちが生活するための民家を探し始めます。そこで出会ったのが、田村市滝根町にあるこの場所でした。内見に訪れた二人は、「ここしかない!」と直感し、即決。その決め手について朋恵さんは「土地が広く、傾斜もあってキャンプ場を開くのにぴったりだと思いました。この民家も廊下が広々としていて、田舎ならではの造りが素敵。玄関に入った瞬間に『ここだ!』とビビっときたんです」と教えてくれました。
田村市との不思議な縁
田村市を目指して移住を決めたわけではなく、条件に合う物件を探す中で偶然たどり着いた場所でした。しかし、敬三さんは、以前から田村市と不思議な縁があったのです。
2011年の東日本大震災の後、田村市船引町では木造仮設住宅の建設が進められていました。大工として働いていた敬三さんも、当時その工事に携わっていたのだとか。「10年以上前から、田村市とは縁があったんだろうね」そう振り返る敬三さん。この場所に導かれるようにして、二人はここに移り住むことになったのかもしれません。
移住後は夢だった家庭菜園をスタート!
2023年10月に田村市滝根町へ移住。移住後は、朋恵さんが長年夢見ていた「家庭菜園」をはじめました。夏はトマトやナス、冬はネギや大根など、四季折々の野菜を育てる二人。ご近所さんから、大量の苗を分けてもらうこともあるのだとか。
「田村市は、土や水がとても良いんです。畑の経験ゼロの私たちでも、驚くほど甘くておいしい野菜が育つんですよ!」そう嬉しそうに話す朋恵さん。
一方で、この地域ならではの課題も。
「5月末まで霜が降るのが難点。もっと家庭菜園を楽しむために、ビニールハウスにも挑戦したいですね」そう意気込む敬三さん。
また、移住後の暮らしで不便に感じることを聞いてみるとーー
「神奈川では当たり前にできたことが、田村市では少し手間がかかることもあります。でも、それが嫌だとは全く思いません」と朋恵さん。
都会の便利さとは違う、不便さも含めて楽しむ暮らし。二人は、自分たちらしい「田村ぐらし」を存分に謳歌しているようです。
満点の星が見られる!山に囲まれ、静かで自然豊かなキャンプ場「camp circleきずな」とは
移住から半年後、山に囲まれた自然豊かなこの地に「camp circleきずな」をオープン。キャンプ場だけでなく、民泊もできるという、全国的にも珍しい施設です。

キャンプ場には、区画サイトとフリーサイト、RVパークを完備。グループでもソロでもゆったりと楽しめる空間です。テントやタープの貸し出しもあるため、初心者でも安心してキャンプデビューができます。宿泊だけでなく、日帰りで気軽に楽しめるデイキャンプも可能。テントを張って昼寝をしたり、バーベキューをしたりと、楽しみ方はさまざまです。
さらに「あぶくま洞」や「星の村天文台」までは車で30分圏内。子連れで楽しめる観光地へのアクセスが良いのも魅力の一つです。

斜面地を活かして造成したキャンプ場だからこそ、視界が開けており、晴れた夜には満天の星が輝きます。午前3時頃には、天の川が見られることもあるのだとか。
民家を自ら改修!キャンプ場の母屋を「民泊」にしてオープン
キャンプ場の母屋は、民泊として利用できます。敬三さんがお仲間の力も借りながら、自らがリノベーションして手掛けました。その結果、費用を約3分の1に抑えられただけでなく、二人の「理想の空間」を形にすることができたといいます。和室、食堂、囲炉裏、そしてお風呂までーーDIYとは思えないほどのクオリティです。

部屋は全部で3つ。すべて畳敷きの和室で、自然に囲まれた場所でゆったりと寛げます。


地下水を汲み上げたミネラルたっぷりのお風呂。ミネラルの力で体の芯まで温まり、ポカポカが持続します。さらに、壁に使われたヒノキが心地よく、リフレッシュ効果も抜群です。

民泊は朝食と夕食付き。夕食では品数豊富な通常メニューとバーベキューのどちらかを選べます。
実は、敬三さんは料理人として働いた経験があり、料理の腕前もプロ級!手間暇かけた品数豊富の料理を、ゆったりと味わえます。

広々としたウッドデッキは、約20人がくつろげる空間。バーベキューが楽しめるのはもちろん、朋恵さんが念願だった「ピザ窯」も備えられています。夕飯でバーベキューを選択した場合、ピザ窯で焼きたてのピザを味わうこともできます。

炊事場には大きな水槽があり、その中を泳いでいるのは‥‥なんとイワナ!田村市のお隣、川内村の「イワナの里」から仕入れた、新鮮なイワナを楽しめるのだそう。焼き魚として味わえるのはもちろん、季節によってはお刺身でもいただけるそうです。

地域おこし協力隊の女性との出会い
ポジティブで、かつ「考えるより行動派!」の朋恵さんと敬三さん。行政に一度も相談することなく移住を決め、キャンプ場を作り始めたといいます。
「普通なら、事前によく調べたり、相談をしてから移住しますよね。今考えれば、私たちは異色だったと思います」そう笑って振り返る朋恵さん。しかし、知り合いゼロからのスタートだったにも関わらず、告知や地域の方々との関係づくりには苦戦しませんでした。その背景には、とある地域おこし協力隊の方の存在がありました。
「近所に住む地域おこし協力隊の女性が、地域の方々や知り合いに積極的に宣伝してくれたんです。SNSでの情報発信やマーケティングもその方が教えてくれました。」
民家の改修には福島県の「福島県12市町村起業支援金」を活用
民家の改修には、福島県の「福島県12市町村起業支援金」を活用。リノベーションに必要な材料費の補助を受けました。(※2024年度に募集していた支援金です。)通常、補助金の申請には建設会社の見積もりが必要ですが、二人はホームセンターで材料を購入。そのため手続きが複雑になり、「かなり手間がかかって大変だった」と当時を振り返ります。そんなとき、ふくしま12市町村起業事務局の担当者の方が献身的にサポート。さらに、その担当者の方が、地域おこし協力隊の女性を紹介してくれたのだそうです。地域の人々の支えがあったからこそ、二人のチャレンジは少しずつ形になっていきました。
「人とのつながり」の原点
『人とのつながり』これは、二人がキャンプ場を運営する上で最も大事にしていることです。
その想いの原点について伺うと、敬三さんはこう語りました。
「東日本大震災の後、『絆』という言葉がよく使われるようになりました。でも、震災だけじゃなく、生きていく上で人とのつながりや絆こそが一番大切だと思います。」
例えば、リノベーションを手伝ってくれた建設会社の仲間たち、宣伝や支援金の申請手続きをサポートしてくれた地域おこし協力隊の女性、デイキャンプに足を運んでくれる移住者、ツアーのお客さん。実際に、朋恵さんの昔からの知人と、田村市の地域おこし協力隊の女性がこのキャンプ場を通じて親しくなり、神奈川から会いに来ることもあるのだそう。
苦労した水漏れの対応もポジティブに変換。「出会えてラッキーだった」
移住の直前、最強の寒波が福島県に到来。寒さの影響で水道管が破裂し、民家に水漏れが発生しました。家の至るところが水浸しになり、地元の建設会社に改修工事を頼んだといいます。しかし、こんな大変な出来事も、二人にとっては新たなご縁のきっかけ。
「水漏れが発生したことで、田村市の建設会社さんと出会えました。キャンプ場オープンにあたって、杉の根っこを引き抜く機械をお借りしたこともあります。水漏れの対応は大変だったけど、地元の建設会社さんと出会えてラッキーでした」どんな困難も「チャンス」に変える二人の姿勢が、この土地での暮らしをより豊かなものにしているのかもしれません。
田村市への移住や起業を検討している方にメッセージ
神奈川県から移住し、ゼロから起業。知り合いがいない土地にもかかわらず、今や地域の方や移住者とより良い関係を築いている二人。
「田村市はチャンスがたくさんある市だと思います。特に滝根町はお店や飲食店が少なく、競合もない。だからこそ、なんでもできると思います。個人的には、もっとキャンプ場が増えたら嬉しいですね。田村市のキャンプ市場が大きくなれば、もっと多くの人が訪れるようになると思います」と朋恵さん。
また、敬三さんは「田村市で新しい事業をやりたい!」と相談にくる方には「極力自分の力でやること」とアドバイスするといいます。「建設業者に頼めば、もちろん良い場所ができる。でも、何千万〜何億円という費用がかかることもある。地道に起業を目指す人にとっては、なるべくお金をかけずに夢を叶えることが大切だから。」
「やりたい」と思ったら、まずは一歩踏み出してみる事。ゼロからの挑戦でも、仲間や地域とのつながりがあれば、道は広がっていく。二人が歩んできた道のりが、そのことを証明してくれています。
camp circleきずな
住所:田村市滝根町神俣和貢328-2
電話:080-5656-3395/0247-61-7896