移住先でつながりを作ろう!誰でも気軽に農に触れられる場で、地域を愛せる未来を育むコミュニティ農園『nami nami farm』

nami nami farm

船引町

阿武隈高原の雄大な自然に抱かれた福島県田村市は、自然に囲まれた暮らしや、土地に根ざした農業を営むのに適した地域です。移住や就農には大きな魅力がありますが、具体的に考えるうちにさまざまな不安が生まれてくる方も多いのではないでしょうか。田村市船引町にあるnami nami farmは、気軽に農業体験ができる場であると共に、移住前後を通して地域や人とつながる拠点にもなっているコミュニティ農園。「農業が主要産業である田村だからこそ、自然と共存しながらこの地域を愛せる未来を目指していきたい」と農園を立ち上げた地域おこし協力隊の中山真波さんに、活動内容やこれからの展望についてお話を伺いました!

みんなで楽しみながら農業や食育を体験!nami nami farmの活動について

nami nami farmは、耕作放棄地を活用したコミュニティ農園です。ご参加くださる皆さんと一緒に、地域の方にもサポートいただきながら、野菜の種まきや定植作業、収穫、日々の草取りといった活動を行っています。また野外でのバームクーヘンづくりや味噌づくりといった、四季の恵みをいただく手仕事の体験イベントも開催しています。

船引町の旧石森小学校プール横の土地を活用。体験農園ということで、ジャガイモ、トマト、ピーマン、ズッキーニ、ナス、ポップコーン用トウモロコシなど、さまざまな野菜を栽培している

参加者としては「農業体験をさせたい」「食育に関心がある」という、小さなお子さん連れのファミリーの方々が多いです。また移住体験ツアーの一貫で体験に参加した都会の子どもたちからは、「ズッキーニってこんな生え方をしているんだ」「トマトって鈴なりになるんだね」といった感想が聞かれ、野菜がどのように実るかを、ここでの体験を通して学んでくれていることが分かります。トマトなんかは、収穫したその場で食べることもしますよ。「自分はどんな味が好きか」を感じてほしいので、食べ比べできるようにいろいろな品種を植えています。ナスは、よく見る紫の卵形の品種の合間に白ナスや米ナスを植え、「こんなナスもあるんだ!」と、楽しみながら収穫体験をしてもらえるようにしています。中高生のサマーボランティア受け入れも行っており、野菜を収穫した後、テラス石森の家庭科室でドライカレーを作り、みんなでランチとしていただく体験も行いました。

誰でも気軽に体験できる場で、自然に優しい農業がしたい

nami nami farmを立ち上げたのは2021年、私が普段活動しているテラス石森の運営スタッフと「畑をやりたいね」と意気投合したことがきっかけでした。農業をとことんやるというよりも、体験を前提にした農園を作ること、SDGsを意識し環境負荷がかからない形で農業をすることに着目し、耕作放棄地を活用しながら野菜の生命力を生かす栽培方法を実践しています。

文字通り、鈴なりのトマト。nami nami farmという名称には、立ち上げたメンバーの名前や「山並みの中でなみなみと野菜が育つように」という願いが込められている

肥料については、自然由来の材料を使い地球に優しいものを使うことを意識しています。また、竹チップや雑草を使った土壌改良も行っています。竹チップを土の上に引き、雑草をかぶせて水をかけ、その上にマルチシートをかけておきます。この状態にしておくと、微生物が土を良くしてくれ、チップを引いた場所の土壌改良になるのです。資材について、現在はプラスチック製のものも一部使っていますが、今後活動する船引町長外路(ながとろ)の畑では、例えば支柱として周辺に生えている竹を使うなど、自然にあるものを生かしていきたいと考えています。

子どもの頃に憧れた自然いっぱいの田舎暮らし。大変なことも自分なりに折り合いをつける

私は東京都の多摩ニュータウンで生まれ育ちました。身内に農業をやっている人がおらず、漠然と「自分が食べられる程度、楽しめる範囲で農業をやってみたい」という憧れを抱いていました。また、同級生たちが夏休みや冬休みに「おばあちゃんの家にお泊まりする」「田舎へ行く」と話しているのを聞き、東京が実家の私は羨ましく思っていました。小学4年生の林間学校で古民家に宿泊し、ザ・田舎暮らしというものを体験して衝撃を受け、いつかこういうところで暮らしたいなと感じました。福島には仕事の関係で縁ができて住み始め、それから20年以上、福島と東京を行き来する二拠点生活を送っています。

間引きしたカラフルにんじん。収穫直後のフレッシュな香りや色の鮮やかさに心が躍る。ほのかな甘みと食感で、そのまま食べてもおいしい

農業や自然に囲まれた暮らしは魅力的ですが、虫刺されや草刈りといった大変さもあります。nami nami farm周辺はブヨや蚊が多く、私は刺されると腫れやすい体質なので、長袖を着たり虫除けスプレーを常備したりするなど、気をつけて作業しています。知らないうちに虫が入って刺されてしまうことがあるので、長靴もいろいろ試して選びました。丈が膝まであり、先がしぼれて、素材として柔らかいタイプのものが、私には一番合うことが分かりました。素材が柔らかい分自立はしないですが、足を曲げながらの作業も楽で、疲れにくいです。

草刈りも終わりが無い戦いですが、場所によっては、刈った後に別の植物や山野草が出てくることがあり面白いです。おそらく、下に眠っていたものが伸びてきたのですが、この春は草刈りした後にノビル(※)があちこちから出て、取り放題でした。
※春の野草。ネギやニラ、ニンニクのようにツンとする香りが特徴で、白い球根部分や葉、茎も食べることができる

いろいろと大変さはありますが、運動だと思ってやっています。子どもの頃はスイミングを毎日やっていたくらい体を動かすことが好きなのですが、子育て中は自分のペースで動きにくくなりますし、出産含め数回開腹手術をしたため、なかなか体調が戻りきらないことを実感しています。これを整えたいので、体を動かすことを意識し、さらに素材そのものを楽しむ食べ方ができるよう料理しています。これまでにレストランでの経験や、衛生管理責任者や発酵マイスターといった資格取得、食の6次産業化を担う人材の育成を目的とした「食の6次産業化プロデューサー」の認定も取得しました。仕事で必要だったからというのもありますが、食に関することが好きなので、チャレンジして取得し、今の活動に生かしています。

nami nami farmのこれからと、中山さんの野望

2024年春に、船引町長外路にある古民家と畑、田んぼ、山林を所有しました。理想の物件を求めて3年間探し、最終的には地域の方にご縁をつないでいただきました。nami nami farmも来年以降、活動場所を石森から長外路に移します。周辺を歩いたところフキがたくさん生えており、今まで買っていた野菜を自然の恵みから収穫できる豊かさを感じています。

一部土壁が残っている古民家は今後リノベーションし、カフェのオープンを目指しています。お隣の納屋も、ゆくゆくは子ども達の秘密基地やコミュニティスペースにしたく、片付けと改装をスタートしたところです。

納屋の片付けには、移住してきた小学生や地域の大学生も参加。火鉢や農機具、昭和33年の新聞や洋服の型紙などを発見。「ここの人は服が好きだったのかな」「服を作るワークショップをやろうか」など、さまざまな人が関わりながら活動のイメージを膨らませる

畑は耕作放棄地となり一部が薮になっていますが、丁寧に開拓し農園として整備したいです。先日は試みとして綿の種を蒔き、化学肥料を使わないオーガニックコットンの栽培を始めました。今のところ芽がしっかり出てきてくれています。

稲作はやったことがなく、田んぼは手つかずではあるのですが、水中には絶滅危惧種のゲンゴロウをはじめ、アカハライモリやミズカマキリ、ヤゴ、ドジョウなどの多様な生物・植物が生息していることが分かりました。研究や保護観察など、生物多様性にまつわる活動もできたらと思っています。もし見つけた場合は、観察が終わったら逃がしてくださいね。山林は、子どもたちが安全に森の中で学べる場として、整備を進めています。

古民家から長外路地区をのぞむ。城址であるこの場所から、時代を超えて新たなにぎわいが生まれようとしている

この古民家は、安土桃山時代にあたる天正年間に存在した長外路城の跡地に位置しており、この歴史ある土地を大切に活用していきたいと思っています。活動サポーターも募集していますので、ぜひInstagramをチェックしてくださいね。

「自然に囲まれた暮らしをしてみたい」「就農してみたい」とお考えの方へ

まずは無理のないところから始めるのが良いと思います。好きなことっていくらでもできてしまいますが、新規就農された方で「はじめからがっつりやって疲れてしまった」という方もいらっしゃいます。もうやりたくない…となってしまうともったいないですから、小さいところからスタートし、楽しみながら好きなことをやるという形が、良いのではないかと思います。nami nami farmでは、草刈りや土壌改良を一緒に体験したり、自然農業についてお伝えしたりすることもできますので、ぜひご連絡くださいね。

nami nami farm

住所:福島県田村市船引町石森字舘108 テレワークセンターテラス石森
※畑はテラス石森から徒歩3分
Instagram:https://www.instagram.com/nami_nami_farm/