思わず「炭治郎---!!!と叫びたくなる岩発見!大自然から生まれた都路巨石群

都路巨石群

都路町

BIG ROCK

福島県田村市は5町村が合併してできた町。その1つにして唯一の村であった都路町(旧都路村)は、現在も豊かな自然が残り、人と自然が共存している場所です。そんな都路町には、古くからの風習や信仰、伝説が数多く残っています。

今回はそんな都路町から、観光スポットとして注目を集める「都路巨石群」を紹介したいと思います。都路観光協会の方々にご協力いただき、巨石や周辺事情について説明を受けながら、実際に行ってみました。

車を止めて見上げると…いきなり圧巻!!!巨大「亀石」登場

↑こちらの写真は巨石群周辺の案内板。今では巨石の種類はもっと増えているので、詳しく知りたい方は都路観光協会にお問合せください。今回は、地図の左上にある代表的な巨石「亀石」や「笠石」を有する笠石山を訪れました。

まずは車で国道288号線を田村市船引町方面から双葉郡大熊町方面へと向かいます。都路エリアの住宅街(岩井沢地区)に入ると、左側に電波時計塔が見えてきます。こういうの↓

この電波塔の先を左に曲がる道があります。角には「古代亀石」の案内板があるので、まずはこの道を忘れずに左折しましょう。

電波塔の先にある曲がり道。「古代亀石」の案内板あり

後は、ところどころに立っている案内板を頼りに進みます。看板が小さかったり、読みにくくなっているところもあるので、見逃さないようドライブを楽しみながら、ゆっくり注意深く進んでください。

最後、この看板↓(写真)が出てきたら到着です。駐車スペースに車を止めてください。決してその前にフライングして横を見てはいけません。感動は後に取っておきましょう。

車を止め案内板の前に戻ってきて、「さぁ亀石はどこかな?」と顔を上げると…

目の前にどーん!!!亀の形をした「古代亀石」が鎮座しておられます。この写真だと比べるものがないので大きさがいまいち伝わらないですが、こちら高さが10.7mなので、大人の女性(身長160cmと仮定)が約6人から7人縦に並んだ大きさですね。重さは約2,800トンなので、何と例えましょう…例えばトヨタのプリウス(約1.5トン)なら約1,866台分、主に長距離を飛ぶジャンボジェット(自重約150トン)なら約18台分相当と考えてください。比較対象が大きすぎて、笑えて来る程の「巨石」です。

この辺りでは昔から「無病息災 鶴は千年、亀は万年」と伝えられており、その亀によく似たこの岩を見た村の人々が、しめ縄を張り崇拝の対象としたと言われています。そして亀石の上には天狗が舞い降りた際についたという天狗の足跡があると、言い伝えられています。

以前はこの亀石の上にも自由に行くことができたのですが、さすがに危ないということで、周囲には縄が張られ、今は登れなくなっています。神様の化身ですしね。ただ、下から見上げるだけでもその貫禄は十分です。

思わず「炭治郎---!!!」と叫びたくなる「笠石山の刃」

(漫画『鬼滅の刃』より)

古代亀石を堪能したら、すぐ横にある山道を入って進みます。この道は標高763mの笠石山山頂に続いていて、巨石はその道中に点在しています。「高い!」と思うかもしれませんが、心配無用。実は車で到着した亀石はすでに標高634m。そう、スカイツリーとほぼ同じ高さです。

この看板を目印に、山の奥へと進みます

亀石の横を通り過ぎ、山道を進み始めてから数分で次のチェックポイントが見えてきます。
次の巨石がこちら↓

きれいに真っ二つに割られた「笠石山の刃」

「炭治郎---!!!」と思わず叫びたくなるのは私だけでしょうか?この険しい山の中の立地といい、真っ二つ具合といい、漫画『鬼滅の刃』で主人公炭治郎が師匠との修行の最終段階で挑んだ岩に似ています。ここは…コスプレポイントかもしれません。

という個人的な感想はほどほどにして、こちらの岩は高さ約2.5m、周囲は約5m。いわれとしてはその昔、この辺りの地域が日照りに見舞われ民が苦しんでいると、罔象雷(ミズハイカヅチ)の神が剣を両手に天に向かって掲げたところ、雷光が刃と化し巨石を割り、そこから大量の水が流れ出でて、集落を救ったそうな。

水があふれ出る…水…水…「水の呼吸じゃん!!!」と私と同様またまた『鬼滅の刃』に発想が飛んだ方、ぜひ一度現地をご自身の目で見てみてください。(元ネタを知らない方、限定的な話ですみません)

いよいよ笠石山の目玉、「笠石」、そして「夫婦岩」へ!

さて、ここまでは山登り初心者でも難なくたどり着けると思います。が!ここからは完全に上級者コース。しっかりとした靴、長袖長ズボン、軍手の準備は良いですか?間違っても観光ついでにサンダル&半袖なんかで登ってはいけません。

さあ、木から木に結ばれたロープを頼りに(それもところどころなくなりますが)、頂上に向かいます。思いのほか急な箇所や、ルートは…こっち?それともこっち?と迷子になりそうになりながら、観光協会の方々の案内に必死でついていきます。途中には名前はついていないながらも見事な巨石がドーンとあったり、イガイガに入った栗やトカゲとの出会いがあったりと、大変ながらもお楽しみポイントは豊富です。ちなみにこの辺りは蛇はいても熊は出たことがないそうなので、ご安心(?)を!

ロープを頼りに山登り。途中には名無しの巨石↑(周囲16m)も。
途中には栗やトカゲとの出会いも。(栗、踏むと痛いのでご注意を)

途中には栗やトカゲとの出会いも。(栗、踏むと痛いのでご注意を)

登り始めて20分程経ったでしょうか?ついに「笠石」が見えてきました!「笠石」は、名前の通り笠をかぶったように岩の上にもう一つ大きな岩がのっていることからそう呼ばれています。こちらをご覧ください↓

笠石山の山頂近くにそびえ立つ「笠石」

この辺りは広葉樹の森。秋には紅葉、そして春には笠石周辺の山桜がきれいに笠石を彩るそうです。
笠石の表面には「岩茸(いわたけ)」がぎっしり生えていました。岩茸は苔の仲間で、後々調べたところによると、1年間に1mm程度しか成長しないそうです。そんな高級食材を「ラーメンに入れるとうめぇんだ」と話す地元観光協会の方のお話に、高級食材があちこちに自生している都路感をひしひしと感じました。(もちろん笠石の「岩茸」を取って食べているわけではありません!みなさんも決して取らないでくださいね)

なお、笠石周りは山桜保存のため道がわかりづらくなっていますので、特に注意してお進みください。

笠石表面についている岩茸

さぁ、終着点までもう少しです!
笠石を過ぎるとすぐ、木が伐採され、少し整備された歩きやすい道が出てきます。そのまま進むと、今回の目的地、夫婦岩に到着です。

後光を浴びる怒ったような顔の男岩
水が流れ続ける女岩

女岩には山水が流れていますが、岩に耳を当てると中からも水の音がきこえるそう。なんでもこの水の音が絶えたことは、未だかつてないそうです。

女岩には空洞があり、小さな祠(ほこら)があります。蝙蝠も住んでいるそうで、突然ライトで照らすとびっくりした蝙蝠が飛び出してくることもしばしばだとか。なぜこんなに来るのも一苦労な場所に祠があるのか尋ねたところ、今でこそ来るのが難しい場所ですが、このあたり一帯は元々都路の主幹産業であった炭焼きのため、地域の人たちの出入りが多かった場所だそうです。
時代と共に炭焼き文化が減り、今では都路で炭焼きをする人はほぼいなくなってしまいました。従って、炭焼きの拠点だった笠石山も、木々が生い茂り、人を寄せ付けない、それ故とても神秘的な場所へと変わっていったそうです。

亀石から夫婦岩まで、ゆっくり歩いておよそ20~30分。笠石山には大自然から生まれ、人々が大切に守ってきたまさに都路らしい巨石が密かに、そして荘厳と鎮座していました。

最後に、夫婦岩の前にある案内板に書かれた笠石山の巨石群につながる言い伝えを、記しておこうと思います。

『笠石山の伝説』
その昔、西国から稲作が伝わり間もなく、この地において日照りが続き多くの餓死者がでたそうな。村人は困り果て、大山祇の神に懇願すると、大山祇の神は水の神様と農業の神様を呼び、その地に行き村人を助けるよう命じたそうだ。二人の神は早速この地に来て33日間大石の上に座り雨ごいをしたそうだ。すると辺りが真っ暗となり雷鳴がとどろき大雨が降り、稲妻と共に周辺のいくつもの大石は二つに割れ水が流れ出たと言う。驚き喜んだ村人がこの地に来てみると、水の神様は傘を覆った石となり、農業の神様は亀になったという。やがて流水は水田を潤し、その後、村人はこの地を笠石山と呼び亀石を古代亀石とよぶようになった、とさ。

ここから少し離れた場所には、長さ11m、高さ1.8mにもなる「船石」や、平家滅亡後に落ち武者となった武士が、敵から隠れるためにたどり着いたとされる「大岩観音」、坂上田村麿呂が蝦夷征伐の際、家来50人を座らせて戦略を練ったと言われる「五十人山の大石」など、笠石山の巨石群に負けず劣らずの巨石が存在します。本当はその辺りの巨石についてもご紹介したかったのですが、長くなってしまったため今回はこの辺で終わりにしようと思います。他の巨石に関しては、機会があればまた書きたいと思います。

笠石山の巨石群についてのお問合せ

都路町観光協会

メール:miyakojimachi.kankokyokai@gmail.com
URL:https://www.facebook.com/miyakojimachi/about/?ref=page_internal