福島の震災復興を支える広葉樹再生で、持続可能な林業と地域再生を目指す「ふくしま中央森林組合」

ふくしま中央森林組合 都路事務所

都路町

阿武隈高地に位置する福島県田村市都路町は、広大な森林資源を有する地域です。この地域では、ふくしま中央森林組合 都路事業所(以下、ふくしま中央森林組合)が中心となり、広葉樹をメインにした森林整備や木材加工を行っています。震災後に停滞していた広葉樹林の再生プロジェクトを推進し、地域資源の有効活用と林業の未来を見据えた活動を続けています。今回は、ふくしま中央森林組合の理念や事業内容、次世代に引き継ぐ森林づくりについて、所長の宗像さんと業務課長の松本さんにお話を伺いました。

阿武隈高地の自然を守る「ふくしま中央森林組合」

ふくしま中央森林組合は、福島県田村市都路町で広葉樹を中心に森林整備や木材加工を行っている森林組合です。阿武隈高地に位置するこの地域は、豊かな自然環境と広大な森林資源を有しており、森林組合はそれを活かした活動を展開しています。

震災前は地元の住民も多く携わっていましたが、震災以降、高齢化の影響で減少してしまいました。現在は、町外から通勤する方が多く、移住して林業に携わっている方もいます。移住者が新たにこの地に来てくれたことで、地域に新しい風が吹き始めています。

次世代に繋ぐ広葉樹の森林整備

私たちが取り組んでいる「森林整備」というのは、森を健全に保つためのお手入れのことです。具体的には、木を植えたり(植栽)、雑草などを刈ったり(下刈り)、不良木等を間引く(間伐)といった作業等を行います。都路町では主に広葉樹を植栽しており、これらの木を20〜25年の周期で伐採します。一般的に広葉樹は3回ほど萌芽更新(伐木した根株から新たに木が生えること)をし伐採することができますが、これは木の種類や成長速度によっても異なります。一方、スギやヒノキ等の針葉樹は伐採までに50年以上の時間が必要な場合もあります。

阿武隈山系の都路地区では、広葉樹の方が針葉樹よりも育ちやすい環境にあるため、私たちの組合では主に広葉樹を取り扱っています。広葉樹は、ナラやサクラ、クリ、ケヤキが代表的で、それぞれが地域の自然に根付いています。このような木々を植え、次世代へと引き継いでいくことが、私たちの大切な役割だと感じています。森林の未来を見据え、長期的な視点で持続可能な林業を目指しています。

しいたけ原木と都路町の林業の歴史

かつての都路町では、木炭生産を目的とした森林整備が中心でした。(炭焼きの文化)炭竃(すみがま)で木材を焼き、炭に加工する技術が伝統的に受け継がれていましたが、昭和40年代頃からしいたけの原木生産に切り替わりました。それまで炭に利用されていた木材が、しいたけの栽培に必要な原木として使われるようになったのです。しいたけ栽培に使用される原木は、さまざまなサイズのものがるそうですが、元々炭焼き用に生産していた3尺(約90cm)という規格が運搬しやすさ・扱いやすさに長け、需要が拡大していきました。この原木が福島県外にも広がるようになったのは、田村市船引町にある運送会社の協力が大きかったそうですよ。

放置されてしまった広葉樹林の再生へ、未来を見据えて

震災後、私たちは新たな課題に直面しました。原発事故の影響で、食用であるきのこの原木となる広葉樹は出荷が停止になりました。そのうえ、都路町は避難対象になった地域であったことから10年以上森に入ることができませんでした。基準値以上の放射性物質が確認され、かつ広葉樹の萌芽更新のサイクルから外れた広葉樹は収穫時も将来的にも生産・出荷することができなくなってしまいました。

そこで私たちは、令和3年から里山・広葉樹林 再生プロジェクトとして推進。このプロジェクトでは、約3,000ha、東京ドームに換算すると約650個分に相当する広葉樹林を再生しようとしています。まず、放置されて成長しすぎた木々を皆伐(木を全て伐採すること)し、適切な管理のもとで新たに広葉樹を植え、将来に向けて持続可能な森林を再構築することを目指しています。震災から13年が経ち、ようやく皆伐が始まり、これから植樹を行い、さらに20年の歳月を経て、初めて収穫や出荷の判断ができるようになります。その未来を見据え、今できることに全力で取り組んでいきます。

ふくしま中央森林組合が目指す未来、理想はかつての林業の形を復活させること

私たちが目指すのは、震災前の状態に戻すことです。現在、林業の多くは会社・団体や森林組合主体で行われていますが、かつては農家さんが、冬の間に自分の山の木を伐採し、しいたけの原木として出荷していました。そのような林業の形を復活させることが、私たちの理想です。もちろん、広大な森林を一度に再生するのは容易ではありませんが、時間をかけて少しずつ取り組んでいきます。

私たちの活動は、震災後の復興や地域の再生と密接に関わっており、林業を通じて地域に新たな活力をもたらすことができると信じています。ふくしま中央森林組合では、地域資源の有効活用と持続可能な森林管理を実現するため、今後も様々な取り組みを続けていきます。そして、都路町の豊かな自然環境を次の世代に引き継ぐことが、私たちの大きな使命です。

ふくしま中央森林組合 都路事業所

住所:福島県田村市都路町古道字戸田平112番地1
電話:0247-75-2013
HP:https://fukushima-forest.com/

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