卒隊間近!地域おこし協力隊で得たものと、これからを語る『岡嵜さん、佐久間さん、佐々木さん』。

地域振興型地域おこし協力隊/岡嵜さん&佐久間さん&佐々木さん

田村市

移住をご検討の方なら一度は目にしたことがあるであろう「地域おこし協力隊」。言葉ではなんとなく理解できていても、具体的にどんな活動を行っているのかイメージができない方も多いのではないでしょうか。

地域おこし協力隊とは、人口減少や高齢化が著しい地域において、地域の活性化や地域振興など「地域を盛り上げること」を目的に設けられた制度の1つ。自治体は地域おこし協力隊として地域外からの人材を積極的に受け入れ、隊員は地域の特性や課題に応じてさまざまな活動を行います。

福島県中部に位置し、自然豊かで四季折々の美しい風景が楽しめる福島県田村市。

田村市の地域おこし協力隊は、最長3年以内での起業を目指す「起業型」と、関係人口の創出や移住定住・空き家問題の解決、地域産業の振興などに重点をおいた「地域振興型」に分かれています。

今回は、田村市で「地域振興型」地域おこし協力隊として活動する3名の方にインタビューを実施し、日々の活動や決断したきっかけなどを伺いました。実際に地域おこし協力隊として活躍する方の「生の声」。移住を視野に入れている方は、ぜひ参考にしてみてください。

岡嵜大治郎さん/林業活性化プロジェクト担当

神奈川県相模原市出身。昔から「ものづくり」への関心が高く、大学では工学部に進み、卒業後は自動車の設計会社に入社。転職活動を機に「住む場所も業種もガラっと変えて、新しいことにチャレンジしたい」と地方への移住を決意。2022年に田村市の地域振興型地域おこし協力隊となり、林業人材確保のためのイベントの企画・運営を担当。

便利な生活の中で感じた「平凡さ」

移住までの23年間、一度も相模原市を離れたことがありませんでした。大型スーパーなど商業施設が多く、東京へは約1時間と好アクセスな相模原市。何不自由ない町での生活は便利な一方で「平凡さ」を感じることもありました。

転職を考えたとき「住む場所も業種もガラっと変えて、新しいことにチャレンジしたい!」と思ったのです。そのとき初めて「地方移住」や「地域おこし協力隊」を意識しました。

新しい場所で、新しいことにチャレンジしたい

移住先を検討する中で、福島県南相馬市ではロボット関連企業が多く進出していることを知りました。元々ものづくりに興味があったので、福島県を心に留めるようになりましたね。

福島県内でも「田村市」を選んだのは、地域おこし協力隊の受け入れ団体である一般社団法人Switchの皆さんの人柄が決め手でしたね。面接のとき「地域おこし協力隊になるということは、良くも悪くも人生が変わる可能性がある。後悔がないようによく考えて」と心配してくれて、その優しさと誠実さに心を動かされました。

地域おこし協力隊として、林業の人材確保に力を注ぐ

約7割が森林である田村市では、震災後の著しい人口減少に伴って、林業の担い手不足が深刻です。私は現在、地域おこし協力隊として、林業人材確保のためのイベントやツアーの企画、情報発信、運営などを担当しています。

具体的には林業に関心がある層に向けて、2ヵ月に1度オンラインイベントを行っています。森林組合や民間事業者などで実際に活躍されている職人さんから、林業のやりがいや奥深さをヒアリングするイベントです。

さらに「現場が見たい」という方に向けては、測量や伐採も体験できる「林業体験ツアー」も用意。実際に3名の方が自分の企画したイベントやツアーを通じて田村市に移住し、林業に就いてくれました。自分も移住者なので分かりますが、移住はかなり勇気がいることです。さらに林業は、日本全体で就業率や定着率が低い。どちらにも高いハードルがあるにもかかわらず、イベントを通じて移住・就労してくれたのが本当に嬉しくて、達成感を感じました。

趣味が増えて「明るくなったね」と言われるように

移住後は趣味が増えたこともあり、地元の友人や親、兄弟から「明るくなったね」と言われます。移住後の趣味はカメラですね。自然豊かな場所を写真に収めるのが好きです。田村市にきて初めて心が動かされたのは、あぶくま洞の「岩壁」。自然そのもののワイルドさを感じて、シャッターを切らずにはいられませんでした。

今後の展望

林業の職人さんたちと関わる中で「木っていいな」と思うようになりました。元々関心のある「ものづくり」を軸に、市産材を使って何か作れればと考えているところです。 

この2年半、林業について、本当に色々なことを勉強させてもらいました。相模原市から出ることがなければ、田村市に来ることがなければ、一生知ることはできなかった世界だと思っています。そして今、林業は日本に絶対に必要なものだと確信しています。今後は自分の出来る範囲で、お世話になった方へ恩返しができれば嬉しいです。

移住検討者の方へのメッセージ

人生で特別な経験をしてみたい方、自分へのモヤモヤを感じる方、自分探しをしたい方にはぴったりだと思います。百聞は一見に如かずで、実際に来てみないと経験できないことが詰まっています。

ただ、地域おこし協力隊はキラキラとした仕事ばかりではありません。理想だけを追い求めてしまうと、ギャップを感じることもあるかもしれません。任期が満了になった後にどう生計を立てていくか、覚悟を持って挑戦してほしいと思います。

佐久間 朱妙さん/空き家・住居問題解決プロジェクト

福島県田村市出身。就職を機に東京の総合病院で看護師として勤務。その後は中国の上海に移住し、在中日本人の健康管理を行うなど医療に関わる様々な職業を経験。2021年に田村市地域おこし協力隊に着任しUターン。空き店舗活用の企画や運営に携わっている。

「人の健康」や「ケア」に関わる幅広い仕事を経験

もともと「人々の心身の健康」への関心が高く、看護師の仕事や、中国で働く日本人の健康管理を行う仕事を経験してきました。

帰国後は昔から関心のあった予防医学を学ぶため、和ハーブ検定の実施や講演会の開催など、知識や文化の普及活動を行う会社に入社。 今でも日本の伝統的な医療や予防医学に根差した和ハーブに強い関心があり、書籍などで学び続けています。

Uターンした理由は2つ。1つ目は体調が優れない母のことが心配で、家族と過ごす時間を大切にしたいと思ったから。2つ目は、東京の情報量の多さに疲れてしまったから。駅や街中、電車の中など至るところに広告やアナウンスが流れ、トレンドやイベントの情報も膨大。忙しさに追われる中で「東京にいなくても出来ることを探そう」と思いUターンを決意しました。

看護師や会社員で学んできた経験を活かせる仕事に就きたい

家から通えること、看護師や会社員での経験を活かせることを重視して、田村市での就職先を探しました。そこで田村市の地域おこし協力隊の存在を知り、ここなら過去の経験を活かしながら、自分と向き合う時間も作れると思いました。その後は話がトントンと進み、自分に合った機会が巡ってきたんだと感じましたね。

「チャレンジショップ」で趣味をビジネスにするサポートを

現在は「チャレンジショップ」の企画・運営を担当しています。商業施設内の空き店舗を、チャレンジショップ「ふらっと」として再活用。ここでは手作りのクラフト商品やワークショップなどのサービスを、出店料0円で販売・展示が可能です。

1年目は認知度が低く、クローズの状況が続いていました。少しでも多くの方に知ってもらいたい。そんな想いから、まずは自分自身で出店を試みることにしたんです。和ハーブの知識を活かして、ハーブ農家やヨモギ農家から仕入れた茶葉をその場でブレンド。お客様のお悩みに応じてブレンドしたハーブティは、地元の方にも非常に好評でした。

その結果、少しずつチャレンジショップの認知度も上がり、2年目となった今年は出店者が大幅に増えました。出店されている商品は、フラワーアレジメントや会津木綿を使ったハンドメイド商品までさまざま。週末の予約は12月まですべて埋まっている状況です。

趣味が収入に繋がると、自分の作品は価値のあるものだと実感できますよね。さらに出店者やお客様が増えれば、交通量も増え、商業施設内や近隣の店舗での消費活動にも繋がる。自分の手掛けるチャレンジショップが、田村市の活性化に繋がれば嬉しいです。

田村市は「成長できる場所じゃない」と決めつけていた

10代の頃は早く地元を出たかったし、上京後も福島県出身と言うのを後ろめたく感じることもありました。20代の頃は特にキャリア思考だったので、東京じゃないと成長できないと思っていましたね。

しかし、Uターンしてから、田村市は「ただの田舎じゃない」と気付きました。起業をサポートする育成塾も充実しており、移住者やチャレンジ精神旺盛な若い人が集まっている。田舎ならではの心の安らぎが得られるだけじゃなく、ビジネスもできる。田舎でありながら、刺激を受けられる環境が整っていることこそが、田村市の強みだと思います。いつの間にか地元の印象が変わり、出身地を肯定できるようになりました。市外へ転出してしまう方にも、この魅力を伝えていきたいです。

今後の展望

チャレンジショップの運営では「自分に出店できるのかな?」「自信がないな」と感じる方に向けて、不安を払拭するワークショップなども行っています。出店者の皆さんが、継続してビジネスができるよう心のケアができれば嬉しいです。

そして今後は、カウンセリングや対話を通じて、市民の皆さんの心の悩みやストレスをケアする事業を起こしたいと思っています。現在の日本では、引きこもりや自殺、高齢者の孤独死が増えており、早急な対応が求められています。医療現場の課題は、そういった方の「お話を聞く時間がない」こと。これは私自身、看護師として働く中で心に引っかかっていた部分でした。地域おこし協力隊での活動を通して、自分が本当にやりたかったことに気付くことができたんです。

移住検討者の方へのメッセージ

「自分探しをしたい人」に、移住はぴったりだと思います。都会で忙しく働いていると、自分探しをするタイミングはなかなか取れませんよね。私自身、Uターン後の3年間は、本当にやりたいことを見つけられた貴重な時間だったと思います。

繰り返しになりますが、田村市はただの田舎ではありません。田舎でありながら若い人が集まっていて、起業について学ぶことも、刺激を受けることも出来る。ビジネスをやりたい人にはもってこいだと思います。向上心や成長したいと言う想いのある方こそ、ぜひ田村市への移住に挑戦してほしいです。

佐々木 馨さん/空き家・住居問題解決プロジェクト

岩手県出身。移住前は仙台にある学習塾の教室長として小〜中学生の学習相談や進路相談を行う。2022年4月に地域おこし協力隊となり、空き家に関する相談対応や利活用者とのマッチング、親子向けの外遊び体験の企画・運営を担っている。

教室長の経験を通じて気付いた、幼少期のうちに子供へ教えなければならないこと

地域おこし協力隊になる前は、10年ほど学習塾の教室長として子供の学習相談や進路指導を行っていました。たくさんの子供や保護者と話す中で、受験に向けて勉強を教えるだけじゃなく、「自分で考えて行動する力」や「学ぶことの楽しさ」を育むことをサポートしたいと思うようになったんです。

特に受験期には、コツコツと勉強してきた子が「失敗したらどうしよう」とプレッシャーに押しつぶされたり、一方で全く勉強をしてこなかった子が、土壇場で馬鹿力を発揮したり…。そんな状況を目にする中で、この「心の強さ」の違いはどこで生まれるのだろうと思うようになりました。その目線で話を聞くと、心が強い子は幼い頃に色々な事を体験していたり、挑戦を褒められることが多かったり。「失敗しても大丈夫!」ということを、経験として知っている傾向にあると気付いたんです。

大事なのは、幼い頃にチャレンジできる経験を与えて、子供の興味を引き出すこと。自主性のある子供を増やすためには、塾で待っているだけでは足りないかもな、とも感じるようになりました。

妻が勧めてくれた「地域おこし協力隊」

教育に携わる者として子供との向き合い方を考え直したい時期でもあったので、まずは夫婦でガラっと住む環境を変えようかと話していました。そんなとき、地域おこし協力隊の広告を見た妻が「挑戦してみたら」と勧めてくれたのです。面接官をしてくれた一般社団法人Switchの皆さんの人柄が良かったことも、決断の決め手ですね。

空き家の相談対応と、親子での外遊び体験の企画に従事

空き家を手放したい方からの相談対応や、利活用者とのマッチングを行っています。
空き家の所有者から「手放したい」との相談を受けた場合には、現状をヒアリングして現地調査を行い、空き家バンクに登録するところまでサポートします。逆に活用したい方から問い合わせが来た場合には、現状や課題をお伝えした上で現地へ案内します。納得されれば所有者さんと引き合わせ、マッチング成立となる流れ。私たちの目指すところは「市から空き家をなくし、新しい方の住まいとして活用してもらう」ことです。

もう1つは豊かな自然の中で、さまざまな外遊び体験ができる「もりのび」の企画・運営です。親子参加型の自然体験・遊び場づくりのプロジェクトで、森にあるものを活用した体験イベントです。塾での経験から「子供たちに決めさせて、やらせてみる。」を大事にしています。子供の価値観が形成される幼少期のうちに、たくさんのことを経験して、自主性を磨いていってほしいなと思います。

生活リズムが整い、時が穏やかに流れるように

地域おこし協力隊になってからは、生活リズムが整い、心が落ち着くようになったと思います。田村市の皆さんは本当に温かくて、地域の方は「これもってけ」と野菜などよくくれます。岩手の故郷に似ていて、窓の外を見ると落ち着きますね。時の流れも穏やかに感じます。性に合っているなと思います。

今後の展望

「もりのび」の活動も含めて、子供たちの将来の選択を広げられるような活動を続けられればと思っています。夢の実現に向かって突き進むことができる力を育てられるようなコンテンツを今後も作りたいです。

移住検討者の方へのメッセージ

移住は、新しい挑戦を求める人にとっては最適な選択だと思います。田村市のような地方は、都会に比べて競合が少なく、挑戦しやすい環境が整っています。例えば都会でカフェを開業する場合は厳しい戦いになりますが、田村市では競合が少ないため、市民に喜ばれる可能性も高い。そのため、成功しやすい環境が整っていると言えるでしょう。やりたいことが明確で、将来的に起業を考えている方には、田村市での挑戦はぴったりだと思います。


地域おこし協力隊募集中!
先輩たちと一緒に働きませんか?

現在田村市では、共に地域を盛り上げてくれる「地域振興型地域おこし協力隊」を募集中です!

\こんな方におすすめ!/
・地方での新しい暮らしを始めたい方
・自分を見つめ直したいと思う方
・自分探しをしたい方
・新たな環境にチャレンジしたい方

田村市の地域振興型地域おこし協力隊は、林業活性化プロジェクト農業活性化プロジェクト空き家・住居問題解決プロジェクト移住定住コーディネーターの4種類があります。

地域振興型地域おこし協力隊は今年度、来年度ともに4名募集しています!

自然に恵まれつつも、自分を磨くための環境も整った田村市で、あなたのスキルやアイデアを活かしながら、地域の魅力を引き出す活動をしてみませんか?

>>詳しくはこちら<<

RECOMMEND

国家公務員が転職した先は林業の世界。「稼げる林業」「100%安全な林業」を目指してたどり着いたアーボリストという職業「久保優司さん」

20代で老舗肉屋を継承。市が行う人材育成塾の仲間に支えられ、今では大人気のBBQ事業を立ち上げ発展し続ける『川合達也さん』

体験ツアーに参加し未経験の林業に魅せられた!家族と一緒に田舎暮らしや空き家改修も楽しむ『浅香純一さん』

未来の森をデザインする。未経験から始めた「木こり」という職業『桑原直人さん』

震災で破損した巨大望遠鏡。どん底から救ってくれたのは、日本中、世界中の星仲間だった。星に取りつかれた天文”楽”者「星の村天文台」台長『大野 裕明さん』

60代で移住し未経験の林業の世界へ!田村の自然の豊かさを次世代へ受け渡す『佐々木重人さん』

家族に健康な暮らしを。いちご農家に初挑戦した、一家の大黒柱。

大きな会社ではなく、珍しい会社にしたい。工芸品を守り続ける一家の想い。

自分の夢につながる仕事を。都会の看護師から地方の空き家コーディネーターへの転身

前代未聞!一時無人となった町で復興に挑んだ東京のサラリーマン。「支援の先」を考え立ち上げた団体が目指すのは「誰もが参加できる社会」『佐原禅さん』

前へ
次へ