親子の時間が日常に。「どんな絵本がいい?」から始まる絵本専門店『石川屋』

石川屋

常葉町

福島県田村市に昔からある常葉町商店街。その商店街の一角に、落ち着いた外観の絵本専門店『石川屋』はあります。扉を開けると、店内はまるで絵画のギャラリー。壁一面を埋め尽くす絵本は、店主である石井修一さんが自ら厳選し、自信をもってお店に来た人に勧められるものを揃えています。

・親子の会話が始まる仕掛け絵本
・ベストセラーではないけれど、後世に伝え続けたい物語
・日常に疲れた時、そっと気持ちに寄り添ってくれる絵

「どんな絵本を買ったらいいですか?」

石川屋に行ったのなら、ぜひ店主の石井さんに尋ねてみてください。
ここは、来た人がふっと肩の力を抜き、自分のため、子どものため、大切な人のため、誰かを想いながら、ゆったりと「1冊」を選ぶ、そんな癒しの空間です。

年齢やテーマ、相手に合った絵本を提案

自分の子どもや孫に、友人の子どものお祝いに「絵本」を贈ることってありますよね。
そんな時「一体どんな本を贈ればいいんだろう…?」と悩む人は多いと思います。

絵本のおすすめを聞かれたとき、石井さんがまずやること。それは贈りたい相手の年齢や特徴をヒアリングすること。

例えば2歳前後の子どもにとって、絵本は“読みもの”というより、親と一緒にコミュニケーションを楽しむ道具。

ページをめくったり、指をさしたり、絵を見て笑ったり。
親子の会話が自然と生まれる絵本をおすすめします。

3、4歳になると、少しずつストーリー性のある絵本へとシフトしていきます。
「次はどうなるんだろう?」と考えながらページをめくる経験は、子どもの“考える力”を育みます。

「『三つ子の魂百まで』といいますが、小さいころに読んでもらった本というのは、忘れないものなんですよね。だからこそ、親子で絵本を楽しむ時間を大切にしてもらいたい」

そう石井さんは話します。また「絵本は子どものためだけではない」とも言います。

「普段忙しくて本を読む機会のない人、日常に疲れた時に寄り添ってくれる言葉が欲しい人、そんな大人の方にもおすすめなんです」

石川屋では、テーマごとにコーナーを作っており、例えば

・ママへの感謝を伝えたい絵本
・おじいちゃん、おばあちゃんを題材にした絵本
・「生きること」「幸せとは」など自分の人生をもう一度考えさせてくれる絵本

など、大人向けの絵本も充実しています。

「大人だって、色んな問題を抱えて生きています。辛かったり、苦しいこともある。それでも生きていかなきゃいけない。そんな大人に、絵本の力で寄り添いたい。癒したい。それができるのが石川屋かなって思います」

何千冊売れたかより、その1冊が誰の心に響いたか

石川屋に置かれている本の種類は約2,000冊。そして2,000種類。
大型書店のように、ベストセラーを大量に置くことはありません。
そもそも、ベストセラーや誰もが知る絵本を置いていないこともあります。

石川屋にある本は、一冊一冊店主の石井さん自身が選んだものです。自ら読んでみるのはもちろん、本の卸会社や出版社、時には絵本作家さん本人に直接絵本の意図を聞くこともあります。

その中で「これだ」と思った絵本だけを店頭に並べます。

「この絵本を読んだ人がどう前向きな気持ちになれるか、読み聞かせをする大人が子どもにどんな言葉をかけられるか、そうしたことを考えて選んでいます」

1種類の本が何百、何千冊も売れる必要はないと話す石井さん。たった1人、その本を必要としている人に届けたい。

石川屋には、福島県内ではここでしか手に入らない本や、一度は絶版になった貴重な本も置かれています。

絵を描き、音を奏で、本を届ける石川屋の8代目

石川屋の創業は、明治初期。詳しい年代はわからないそうですが、現在の店主石井修一さんで8代目になります。

創業当初は農業の傍ら金物を販売する小売店としてスタートしました。その後、薬の販売や教科書、雑誌販売等も手がけるようになり、徐々に町の本屋として定着していきました。

絵本専門店となったのは、現在の石井修一さんが家業を継いだ時。
時代はインターネットの普及に伴い「活字離れ」が問題視されていました。

「今お店を辞めるのは簡単。続ける方が難しい。でも継いだからには、できるところまでやってみよう」

そう決めた石井さんは、誰もが手に取りやすい「絵本」を専門に扱うことを決めました。

「石川屋は本の『入口』です。本を読み始めたばかりの子どもや、普段なかなか本を読む時間がない人、本が嫌いな人、そういう人たちが活字に触れるファーストステップだと思っています。絵本に物足りなくなったら、今度は小説や雑誌、詩集などの本を手に取ってもらえばいい」

自分で読んだ言葉は、自分のもの(言葉)になる。
言葉が増えれば、人生の選択肢が広がる。

「ぜひ人生の選択肢を広げて、自分らしい人生を生きてほしい」

石井さんは語ります。

石川屋では、ライブ音楽にのせた読み聞かせイベントなども開催しています。
時には、音楽をたしなむ石井さん自らが演奏に加わることも。
そして店内にあるかわいらしいイラストは、イラストレーターの顔ももつ石井さん自らが描いた作品。

石川屋を通して、とことん人生を楽しむ石井さんの様子が伺えます。

石井さんがデザインした石川屋の看板キャラクター「シアワセくん」

移住を検討している方にメッセージをお願いします

「『移住』というのは、とても大きな決断と覚悟だと思います。知らない土地での生活は、きっと戸惑うことも多いでしょう。言葉、人、習慣、食べ物ですら初めて体験するという人もいると思います。

例えば隣組の組長さん(※注釈)など、世話を焼いてくれる人に地域との橋渡しをお願いしたり、地域活動に参加したり、地元の商店にちょくちょく顔を出したり、そうして少しずつ地元の人に顔を覚えてもらうことが、地域に馴染む近道じゃないかな。移住後の生活を楽しむ秘訣でもある気がします。

もちろん石川屋にもぜひ来てもらいたいです。本を買わなくても、見るだけでも、話をするだけでも歓迎です」

石川屋は、絵本専門店であると同時に、心を癒す場でもあります。子どもも、大人も、地元の人も、移住者も、みんなをいつでも温かく迎えてくれます。そんな場所が「日常の中」にあること。それもまた、田村市で生きていく心強さのひとつかもしれません。

※組とは…
地域の最小単位。共同作業(草刈りや水路の掃除等)や相互扶助(冠婚葬祭の手伝い等)を行うことがある

石川屋

住所: 福島県田村市常葉町常葉字中町36番地
営業時間: 9:00〜18:30
定休日: 日曜日
Instagram (連絡先): https://www.instagram.com/ishikawaya/