お寿司&とんかつで来る人のお腹も心も満たす!名物夫婦が営むハートフルな老舗寿司屋『すし処やすけ』
すし処やすけ
船引町

知らない場所での暮らしには、期待と同じくらい不安もつきもの。そんなとき、ふと立ち寄れる場所や、ちょっと話せる人がいるだけで、心がすっと軽くなりますよね。福島県田村市船引町にある「すし処やすけ」は、そんな安心を感じられるお店。JR船引駅から徒歩7分、田村市役所本庁舎からは徒歩3分という便利な場所にある、地元に根ざした老舗のお寿司屋さんです。
長年地域の人たちに愛され、常連さんはもちろん、新しく田村での暮らしを始めた人も入りやすい、温かい雰囲気が魅力。今回は、ご夫婦でお店を営む紺野隆紀(りゅうき)さん・千尋さんに、メニューやこだわり、人とのつながりにまつわる想いについて、お話を伺いました!

お寿司屋なのになぜとんかつ?「すし処やすけ」のメニューとこだわり
ーお店はいつから始められたのですか?
隆紀さん:寿司職人だった親父が1963年(昭和38年)に開店して、2025年で創業62年になります。「やすけ」とは、寿司を表す昔からの隠語です。俺は東京の和食屋で修行し、25歳の時に戻ってきて店に入りました。でも親父と一緒に握ったのは、10年やったかどうかくらい。1990年代頭にバブルがはじけたことがきっかけで、郡山市内の海鮮料理店に働きに出ました。その後和食チェーン店に入り、そこでとんかつを覚えました。2009年にやすけに戻り、お寿司ととんかつをメニューに据えた今の営業スタイルを始めました。
ーお店ではどんなメニューが食べられるのでしょう?
千尋さん:お昼のお寿司は、海鮮ちらし、ネギトロ丼、ばらちらし定食。とんかつは、ひれかつ定食、ロースかつ定食、ひれかつ鍋定食、フライ盛り合わせ定食。ほかにも、お寿司とフライの定食やひれかつサンドなどがあります。夜の予約は貸切もできます。握り寿司など、お昼にはないメニューもあります。オードブルやフライ単品といったテイクアウト、お弁当の注文も承っています。


ーどのようなお客さんが来られますか?
千尋さん:「ネットで調べて来ました」という人が多いかな。「田村市 ランチ」で検索するみたいです。市役所の本庁が近いのでランチに来てくれたり、駅から近いので電車で来ましたという人もいます。福島県バス協会が実施した「福島県内バス無料デー」を利用して来た人もいますよ。
ー特に忙しい時期はありますか?
隆紀さん:「二八(にっぱち※)」というけど、うちの場合、2月は恵方巻き、8月は船引町の「灯籠流しと花火大会」で繁忙期。恵方巻きは予約販売のみだけど、おかげ様で年々注文が増え、今年は2斗の少し手前くらいまでお米を炊きました。毎年自分たちの分も作るんだけど、駆け込みで注文が入るとそちらに回しちゃうから、俺は一度も食べたことがないの。笑
千尋さん:灯籠流しでは、店の前にテーブルを出して売っています。人出が多く、出店した最初の年は、たったの3時間でひれかつサンド100個が飛ぶように売れました。ところが全て売り切れた後、小さなお子さんがお金を握りしめて「かつサンドください」って来てくれたんですよ。材料も底を尽きていたから新しく作ることもできなくて、「ごめんね、全部無くなっちゃったの」と話したのですが、それがもう本当に心苦しくて。「お父さん(隆紀さんのこと)、余ってもいいからたくさん作ろう!」と言って、それからはたくさん準備しておくようにしています。昨年の灯籠流しでは、ひれかつサンドが600個、ひれかつバーガーが100個も売れました。
※2月と8月は売上が落ち込みやすい時期であることを表す商売用語

ーどんなこだわりがありますか?
隆紀さん:うちのひれかつサンドはやわらかさが特徴なんだけど、肉自体がやわらかいわけではないんです。サンドイッチを食べるときって、普通パンを上にして、細いほうから口に入れるでしょう?肉の繊維を断ち切るように噛んでもらえるよう、はさみ方を工夫して、やわらかく感じるようにしているんです。ソースは、妻がオリジナルで調合しています。たくさんの方に気に入っていただいて、ソース単品の販売もしています。
千尋さん:ほかには、基本的なことにはなりますが、お掃除をやっています。私は生臭いのが苦手で、今でこそずいぶん食べられるようになったけれど、お魚も苦手でした。だから気になると「お父さん、生臭いよ!」と声をかけて、入念に掃除をします。「お料理も店内も、生物特有の匂いがしない。だから食べに行きやすい」と言ってくれるお客さんもいます。
出店は人とのつながりを楽しむ場
ーどのようなイベントに出店していますか?
千尋さん:声をかけてもらったらどこにでも行きます。InstagramのDMでご依頼いただくこともありますよ。遠いところでは、喜多方市塩川町や鏡石町、二本松市にも行きます。夏は毎週のように出店していますね。3日間連続で出店した時はさすがに疲れ果ててしまって、翌日の店舗営業は臨時休業にさせていただきました。と言いつつ、孫の試合の応援に行っちゃいましたが…。笑
ー出店のどんなところが面白いのでしょう?
千尋さん:出店は楽しいですよ。準備は大変だけど、なじみの人やイベント仲間にたくさん会えたり、新しく知り合いが増えたりするのが嬉しいんです。
隆紀さん:出店で新しく知り合った人が「田村でもやりたい」と言っていたので、わかる人につないだりして。そういうのが楽しくて出店しているんだよね、売上ももちろん大事だけど、人とのつながりって、お金じゃ買えないから。

移住者やお客さんと頼り合いながら毎日を重ねていくお店に
ーお2人は地元の方はもちろん、移住してきた人とも仲良しなのが印象的です。
千尋さん:娘が関西方面に住んでいた時期があって。親戚も友達もいない全然知らない場所に、入社した会社の人だけを頼りに行ったんです。1人でもいいから娘に対して、「大丈夫?」と優しく声をかけてくれる人がいたらいいなって、ずっと思っていたの。だから田村に新しく来た人がいたら、「お腹空いていない?」とか「大丈夫?」とか、なんでもいいから、声をかけようと思ってやっています。
隆紀さん:田村に移住した若い子たちが、店のメンテナンスや広報サポートなど、いろいろ手伝ってくれたことがありました。俺たちにはご飯を作るくらいしかできないと思って、夕飯を作って「ご飯だよ〜!早く食いな〜!」って声かけたら、「家に帰ってきたみたい」って言われたことがあったな。何度も来ていろいろ話をしていくうちに、「自分の親以上だ」と言ってくれた子もいました。

千尋さん:私たちも、周りにいっぱい甘えさせてもらっているし、頼り合いだなと思います。お父さんが体調不良になったとき、ちょうどコロナ禍でいろいろな手続きが必要になったのだけれど、全然分からなくて。移住して店を手伝ってくれていた子に電話で相談したら、すぐに来て書類整理をしてくれて、本当に助かりました。私1人では店舗営業が難しくお弁当販売に切り替えたところ、みなさんたくさん頼んでくれたり、出店すると必ず買いに来てくれたり、そういったことも本当にありがたかったです。そうした人たちがイベントなど何かしらの準備をしている時に、きっと何も食べていないだろうからと思って、カレーをたくさん作って持っていったことがありました。
隆紀さん:自分がしてもらって嬉しかったことを、次につないでいけるといいのかなと思っています。してくれた人に返すのではなく、別の人に渡していく。そうじゃないと、流れが滞っちゃうから。うまく流れが通るように、柔らかくやっていくようにすると、人のつながりなどがいろいろ、丸くなっていくように思っています。
ーこれからどんなお店でありたいですか?
隆紀さん:長年この仕事をしていると、人が出している信号のようなものを、キャッチできるようになります。何か飲みたそうだなとか、困っているのかなとか。知り合いにとても気丈な人がいて、ずっと1人でがんばっているようだったから、「なんか悩みあるの?俺らにも手伝わしてくんにかな」と声をかけたら、ダーって泣き出して、気持ちをはき出してくれたことがありました。
千尋さん:「今日のお昼、カウンター空いてますか?大将と話したくて」と電話をもらうこともあります。ご飯を食べながら気持ちを話して、すっきりして帰っていくんです。どこででも誰にでも話せるわけではない、そういう我慢や悩みって、誰しもありますよね。
隆紀さん:そういうのを話に来られる居場所にしたいなって思いながら、店をやっているところがあります。俺は信号をキャッチしたとき、「これはそっとしておいた方がいいのかな、どうしようかな」って声をかけるか迷うことがあるんだけど、妻はそんなこと考えず、スコーンって直球で「どうしたの?大丈夫?」って聞きにいっちゃうの。
千尋さん:私たちが2人でお店をやっているから、話しに来やすいんじゃないかなと思っています。うちを嫌っていたら来ないよねって思うと、私たちはちょっとでも、役に立つことができたらいいなと思っています。
すし処やすけ
住所:福島県田村市船引町船引五升車3番地1
電話:0247-73-8189
営業時間:昼は11:00〜14:00(13:30ラストオーダー)、夜は17:00〜21:00(今のところ、予約をお願いします)
定休日:日、祝
駐車場:店前にあり
Instagram:https://www.instagram.com/yasuke_official/
※定休日はほぼイベントに出店しています
※ご予約やお問い合わせは、電話またはDMへ