【開催報告】農家さんに直接聞いてみた!webに載っている就農失敗談のウソ・ホント

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2024年7月17日(水) に、Webサイトなどで見かける「新規就農の失敗談」をテーマに、現役農家さんから「実際の農業」についてお話を聞くオンラインイベントを開催しました。
今回は、福島県田村市都路町で農業を営んでいる自然農園リリバリ  青木 純さんをゲストにお招きして、後悔しない新規就農をするために知っておくべきことや理想とのギャップについてお伺いしました。

ゲスト:自然農園リリバリ  青木 純 様
家業である農業を本格的に始め、『食べ物本来の味』を求めて、少人数体制で丁寧に作物を作っている。微生物を利用した有機農法で、作物が持っている生命力を最大限に活かした地域循環方法をとっており、夏はトマトを中心にハーブも栽培し、冬はキャベツを生産している。


知っておこう!新規就農の失敗ケース3選

▶︎ 失敗ケース① 決意が足りない

――農業をするにはどんな決意・覚悟が必要ですか?
青木さん:新規就農は「起業」と同じだと思います。お客様に喜んでもらえるような作物を作るという点では「サービス業」に通ずるところもありますね。水を与えるべき時間も肥料を与えるタイミングも、品種によって様々で勉強が不可欠です。

――例えばどんな苦難がありましたか?
青木さん:大雨が続いて作物ができずに収入がゼロの時がありました。そこで「自分は農業に向いてないんだ」と考えるのではなく、「自分はなぜ農業をやりたいのか」を考え、自分を奮い立たせることが大事です。

――生半可な気持ちで始めると農作物に影響するというのは本当ですか?
青木さん:栽培しているトマトは、一日見ないだけで手入れが追いつかなくなることもあります。毎日苗を見て、病気や枯れてる部分を早いうちに処置しなくてはなりません。

――就農するまでの計画を立てる必要性はありますか?
青木さん:新規就農までのスケジュールを立てることは非常に大切です。農地の確保や土づくりなど、収穫時期を逆算して準備しなくてはなりません。母からは「晴れの一日に何もしなければ、秋の一週間を無駄にする」と言われました。

――就農を始める際に営農計画書は作成しましたか?
青木さん:初年度から生計が立てられるようになるまでの年数と金額を算定して、軌道に乗るまでの計画を立てました。計画通りに進むわけではありませんが、そこで自分の軸ができます。私は始める際に農業短大で勉強し、自分のコンセプトや作物をそこで決めました。

――蓄えや財源については?
青木さん:露地栽培か施設・ハウス栽培かによって初期費用が変わります。生業として農業をするならトラクターがあったほうが効率もいいです。そうした機材は高額なため、行政などの支援・補助金を利用したり頭金を用意する必要があります。

――資金不足で挫折することはありますか?
青木さん:作物を育てる条件は違えど、お金はかかります。うちはハウス4棟+井戸を掘って灌水する施設の設置で2000万ほどかかりました。露地栽培は初期投資なく始められますが、機械導入などで費用がかかります。補助金はできるだけ使ったほうがいいですね。

――ハウスの耐用年数は?
青木さん:補助金で購入した場合、基本的に10年間そこで作物を育てなくてはなりません。ビニールは2~3年で白くなって劣化してしまうため、ビニールの張り替え費用もあります。


▶︎ 失敗ケース② いきなり自分がしたい農業をはじめる

――自分が決めた農法で始めてはダメですか?
青木さん:絶対に先人の知恵を借りて教えてもらってから始めることをお勧めします。農業研修を通して土地の特性、日照量、降雨・積雪量などを知りましょう。農家さんで働きながら他の農法も知ることにより、自分に何が向いているかわかります。徐々にやりたい農法にトライすることが大事です。

――今の農法に至るまで何年かかりましたか?
青木さん:三年ほどかかりました。知り合いの有機農家さんの方法を見せてもらい、とても勉強になりました。自分の農法と同じ農家さんを見学するのも大事です。

――相談できる環境はありますか?
青木さん:郡山の有機農業推進室があり、そこに何度も相談しました。肥料作りを学んだり、隣の市にある有機農家で見学させてもらったり。農林課などの情報も有効活用しましょう。

――農業にビギナーズラックはありますか?
青木さん:成功から学ぶことは大きいため、継続するために分析することが重要です。初めてトマトを有機肥料で作った時にとても甘い物ができたのですが、その理由がわからずに翌年は同じようなものはできませんでした。農業歴30年の両親はずっと勉強していて、「農業に終わりはない」と言っています。

――メディア媒体から知識を得るのはNG?
青木さん:いろいろな失敗談を参考にして、それが本当かどうか試すこともあります。テレビ番組で紹介される農家さんの農法も参考にします。


▶︎ 失敗ケース③ 農業のこと以外を考えていない

――田舎特有の人間関係はありますか?
青木さん:田舎だからといって濃密に地域の人と関わってくるわけではなく、挨拶程度の関係性もあれば、付き合いを大事にするところもあります。地域とまったく関わらずにやっていくのは厳しいと思いますね。

――移住費用はどれくらいかかりますか?
【単身】移住費用30~60万、自動車購入で+50~70万。150万円ほど貯金があると安心。
【世帯】移住費用60~90万、ファミリータイプ自動車購入で+80~100万。200万ほど貯金があると安心。
その他、引っ越し代・住居費用、自動車購入費諸経費、家具家電、暖房器具、駐車場代、自動車教習費、処分費などもかかります。

――就農以外に考えたほうがいいことは?
青木さん:目指したい農業を行っている大手農家さんのもとでアルバイトをして資金調達をしながら知識を得るのも一つの方法です。調べると求人がいっぱい出てきます。

――健康や体力に自信がないけどできますか?
青木さん:農業は体が資本です。なるべく負担がかからないような工夫が必要。きちんと休憩を取り、機械や人を上手に活用してください。

【質疑応答】SNSなどでも情報収集していますか?
青木さん:私はSNSに疎いため、YouTubeなどから情報を得て、気になったことはネットで調べます。

【質疑応答】地域の青年団や消防団、当番制や定期に行う草刈りなどはありますか?
青木さん:ありますが、入らない人もいます。それはその人の自由です。入ると「困った時に相談できる人」ができるので、メリットはあります。


失敗パターンを知って、より良い就農ライフを始めよう!

福島県田村市では、オーダーメイド型農業体験in福島県田村市(一泊二日〜)を開催しております。ご希望に合わせて農家さんとマッチングし、就農への不安解消するための農業体験をご用意いたします。年間を通して受け入れ可能ですので、ご興味を持った方は、ぜひお気軽にたむら移住相談室までご相談ください。

さらに、田村市には就農に関する支援制度・補助金も充実しています。詳しくはこちらをご参照ください。

今回もたくさんの方にご参加いただきました。参加者からは、
・農家になった経緯や、実際の農業について聞くことができました
・就農を始める前からどんな準備が必要なのかを知れました
・農業にもビギナーズラックが存在するのが驚きでした
との感想をいただきました。

たむら移住相談室では今後も、田舎での暮らしを満喫されている方や活躍する地域プレーヤーをゲストにお迎えしてオンラインイベントを行います。ぜひ今後の情報もチェックしてみてください。

たむら暮らし