【開催報告】福島県田村市のきこり(修行中)に聞く!林業やってみてどうですか?
オンライン
2024年5月31日(金) に、移住してから林業を始めた方にお話しを伺ったオンラインイベントを開催しました。
今回は、田村森林組合の造林班として活躍されている松尾聡子さん、同組合の加工課にてご活躍されている浅香純一さんのお二人をゲストにお招きして、林業に興味を持ったきっかけや、実際に携わって感じる今現在の思いをお話ししていただきました。
ゲスト:
・松尾聡子氏(田村森林組合:造林班)
2023年2月に田村市に移住。移住先探しのためにサーフィンをしながら日本を一周しており、その中で田村市に移住を決定した。移住して直後は一人親方(個人事業)として市内の民間林業事業体の業務を請け負っていたが現職に転職し、現在は現場職として造林班を担当している。
・浅香純一氏(田村森林組合:加工課)
2022年10月に移住して田村森林組合に就職。林業転職が希望では無い状態でたむら移住相談室が運営した林業体験ツアーに参加にし、林業と田村の良さに惹かれ移住、転職を決定した。現在は田村森林組合の独自ブランドである田村杉を加工する業務を担当。
林業といっても、仕事内容はさまざま。
──仕事内容について教えてください。
浅香さん:木材加工を担当しています。造林班が切った丸太の皮を剥ぎ、受注数の多いサイズの一つ大きめのサイズに加工します(ラフ材)。それを乾燥機に入れて、受注がきたらお客さんの希望サイズに加工して整えます(木材)。モルダーという回転する刃を持つ機械を使い加工します。
松尾さん:私は、山を育てています。林業は木を切るだけではなく、木を切ったら土地をきれいにして(地ごしらえ)苗を植え、少し木が育った頃に下刈りをし、ある程度育ったら良い木だけを残して間伐することで光の当たり具合などを調整し、真っ直ぐな木を作ります。そして大きく育った頃に収穫します。
──松尾さんは入社して半年くらいですよね?
松尾さん:はい。林業は時期によってやることが違います。春には植林をして、夏には木が育ちやすいようにサポートし、冬に収穫します。入社した時にはちょうど間伐の時期で、すぐに木を切らせてもらえました。
──やりがいを感じる時はどんな時ですか?
浅香さん:狙った寸法に木材を加工できた時です。機械で削り代を調整するのですが、自分でレバーを使って調整するのです。乾燥の具合によって反りなどもあるので、それを考慮して調整します。
松尾さん:作業が終わった時。一つの現場がきれいになっていく様子が明らかに分かり、やり切ったなと感じます。それと、作業の意味が理解できた時。なぜこの作業をしているのかを考えながら行うのが楽しいです。
──逆に辛いところは?
浅香さん:短納期なのに材料が少ない時。材料はストックされていて、そこから注文サイズに合わせて選びます。木材を接着して作る集成材は注文数が多いのですが、納期が短く手順も多いのです。間違えた分だけ無駄が出るため、時間に追われて悪循環になることも。
松尾さん:体力的にきつい時。片道40分で、総重量15kgの作業道具(刈払機10kg、リュック一式1kg、燃料3kg、装備1kg)を持って往復しなきゃいけない作業現場もあります。山の中は足場が悪いので、アザや傷だらけになったりします。
──1日のスケジュールについて教えて下さい。
浅香さん:出社して朝礼し、基本的に一日通して加工作業をしています。夏場は暑いですね。窓を開けていると集塵機のおがくずが飛んできてしまうので、巨大な扇風機を使用しています。
松尾さん:朝は事務所に集合してから、現場に移動します。現場によって場所が違うのですが、8:30から作業できるように調整します。作業時間は17:30までです。
──林業をはじめたきっかけは?
浅香さん:林業体験ツアーに参加したからです。もともとは林業に興味なかったのですが、妻がツアーに勝手に応募したため参加しました。
松尾さん:技術職であり体を動かす仕事がしたかったので。サーフィンをしつつ車中泊をしながら九ヶ月間、日本一周しました。その時に日本は森林が非常に多く緑豊かであることを改めて感じ、緑に関する仕事がしてみたいなと思いました。
──どうして田村森林組合を選んだのですか?
浅香さん:田村森林組合の専務のトーク力に惹かれました。この方なら何を聞いても答えてくれるのだろうという信頼感があり、安心して働けると思いました。
松尾さん:安定した収入があったからです。田村森林組合は、賃金支給形態が月給制なのですが、そういう森林組合は全国でも29%しかないのです。
──移住までの経緯について教えてください。
浅香さん:12月に林業ツアーに参加して、すぐに家族に移住をしたいと伝えました。3月には移住の準備を始め、4月に家探し、8月に面接をして内定をいただきました。9月に住居を決定し、10月に移住を実行。やりたいことが見えたので、やるしかないと思い行動しました。
松尾さん:12月にふるさと回帰支援センターに行って相談し、福島の田村市をおすすめしてもらい、田村市を訪問して林業事業体を三軒見学しました。そこで移住を決意して住まいを見つけて移住。9月にたむら森林組合に就職しました。迷いはなかったのでそこまで大変ではありませんでした。
──移住して苦労していることはありますか?
浅香さん:庭が広く、休みの日は雑草を刈るのが大変です。それと、冬になると車道に撒かれた除雪剤が車の下についてしまうので、毎日洗っています。
松尾さん:家賃の安さから四階に住んだことです。趣味であるサーフボードやスノーボードを持ち運ぶ時に苦労しています。その他にも、カメムシが家に入ってきて困りました。
【質疑応答】配属先は希望して配属されましたか?
浅香さん:希望しました。フォークリフトの免許なども入社してから取得しました。
松尾さん:私も希望しました。未経験でしたが、組合から「緑の雇用」制度で研修に行かせてもらいました。
【質疑応答】何歳まで林業はできますか?
松尾さん:会社の規則で上限はあるかもしれませんが、74歳でもやっている人はいます。
【質疑応答】花粉症でも林業はできますか?
松尾さん:できます。私も花粉症ですが、薬に頼りながら作業しています。
【質疑応答】現場となる山や伐採する木は、どのように決めるのですか?
松尾さん:個人からの依頼と国有林についての仕事を請け負う2つの部署があり、そこから仕事が割り振られます。
成功の秘訣は現地に足を運ぶこと!
林業をしてみてどうですかと質問したところ、「楽しいです!」と声を合わせて答えてくださったお二人。最後に、就林検討者へ向けたアドバイスをいただきました。
浅香さん:現地に足を運ぶことが大切です。体験ツアーに参加するのもいいけど、個人で現地に行ってみると、より詳しく雰囲気が掴めます。私は、現地を訪問した時に「これだな」と感じました。
松尾さん:やはり、体験してみることが重要です。田村市に来てスーパーや道路状況など生活環境を知っておく。林業ツアーにも参加するのも、いいと思います。また、ふるさと回帰支援センターに相談して、移住者の受け入れ状況など事前に情報を知っておくといいですね。
木を切るだけではなく、実はいろいろな業務がある『林業』。少しでも田村市の林業にご興味を持った方は、ぜひお気軽にたむら移住相談室までご相談ください。
今回もたくさんの方にご参加いただきました。参加者からは、
・思っていたよりも大きな組織の業種なのだと知りました
・月給制の林業体系もあるのですね
・体験することが大事とのことで、何事も体験してみたいと思います
との感想をいただきました。
たむら暮らしでは今後も、田舎での暮らしを満喫されている方や活躍する地域プレーヤーをゲストにお迎えしてオンラインイベントを行います。ぜひ今後の情報もチェックしてみてください。
たむらぐらし