【開催報告】自治体担当者に聞いてみよう!新規就農のための計画づくり
オンライン
EVENT REPORT
2023年9月13日(水)と9月27日(水)に、新規就農のための計画づくりについてお話しする、オンラインイベントを開催しました。
田村市役所で新規就農者の相談窓口を担当している農林課の堀越さんと、実際に移住・新規就農を経験し研修を経て作付けに向けた準備をしている佐久間和樹さんのお二人をお迎えし、田村市で就農する流れや実際の行程について全2回を通して分かりやすくお話しいただきました。
ゲスト:
・堀越 様(田村市役所職員)
田村市役所職員。2022年から農林課配属。
田村市は、冷涼な気候を生かしたミニトマトやピーマンなど夏秋野菜の栽培が盛んな地域です。福島県内で生産量トップクラスのピーマンの産地にもなっています。新規就農はミニトマト、ピーマンを中心としておすすめしております。
・佐久間和輝 様
地元である福島を出て首都圏の飲食店で働いていたが、コロナの影響を受けたことで今後の将来のことを考え直すことに。その際に「農業に従事する」という選択肢を思いつき、Uターン。すぐに就農相談をして研修を開始し、今年の8月に研修を終了して独立。来年の4月からの作付を目指して、現在準備中。
農業を始める前から始まっている!就農へのステップ
農林課として新規就農のサポートや農家のサポートを担当している堀越さんは、今まで数多くの新規就農者の相談を受けてきました。そんな堀越さんに、実際に就農を決めた際にどのような準備をすればよいのかなどを中心に、大まかな就農の流れについてご説明いただきました。
【就農の流れ】
①農業経営像を考える
②農業をしたいと考えている地域へ足を運ぶ
③農業経営ビジョンを明確にする
④長期研修を実施する
⑤青年等就農計画の策定
⑥就農に必要なものの確保
⑦就農
①農業経営像を考える
堀越さん:自分がどのような農業をしたいかという考えを固めることが大切です。どこで、どんな作物を育て、どんな暮らしをして、どれくらいの収入を得たいかをはっきりさせましょう。仕事として農業をやっていく覚悟、育てたい作物で生計を立てていけるか、経営が成り立つかをきちんと考えることが大切です。ひとえに農家と言っても、専業農家や兼業農家、ひとつの品目に絞って作る人、多品目を作る人、畑や露地栽培、ハウス栽培など栽培方法も様々。畜産や観光農業なども農業の一つです。販売先もJA出荷、直売所、スーパーなどと直接契約、自身で直売(直売所設置、ECサイトなど)など色々とあります。
最初は生活を安定させるためにも、ひとつの品目よりもいくつかの品目を組み合わせていことをおすすめします。窓口に相談に来る際は、ふんわりと農業をしたいという場合でももちろん大丈夫ですが、具体的に「こういったことをしたい」と決まっているとこちら側も具体的なサポートができます。
②農業をしたいと考えている地域へ足を運ぶ
堀越さん:各自治体に受け入れ体制がありますので、まずは現地に足を運んでみてください。その土地の気候や地理の特徴を知り、希望する作物を育てることができるか、支援制度はあるかなどを調べてみましょう。その土地で農業をしている農家さんの声を聞いてみることも大切です。
③農業経営ビジョンを明確にする
堀越さん:いつどこでどんな農業を始めるか大まかに決めましょう。また、活用する支援制度や、長期研修や就農する時期などの予定を決め、売り先の想定もしておきましょう。まずは、いろいろな体験に参加して絞り込めた段階で研修に移るのが良いと思います。
田村市では以下の作物の栽培をおすすめしてます。
トマト:品種が多く、販売単価が高い。ミニトマト作ってる人が多いため技術習得しやすい。収穫終了後の冬期は葉物野菜が作れる。
ピーマン:福島県内トップクラスの生産量、ブランド化されている、指導体制が整っているため技術習得しやすい、露地栽培から始められるため初期投資が抑えられる。
また現在、田村市ではサツマイモを作ることを応援中。支援制度もあり初期投資を節約でできます。サツマイモを美味しい状態で保存するキュアリング施設なども市が建設しています。共同選果場という、収穫した作物をそこに持っていけば振り分けして袋詰めして販売所に出荷してくれる施設もあります。
④長期研修を実施する
堀越さん:研修は必須ではありませんが、経営基礎を固めるためには必要かと思います。
田村市での研修先としては、以下の場所があります。
・農業総合センター農業短期大学校(県経営、農業の経営に必要な知識技術を習得)
・たむら地域就農支援プロジェクト(国の支援制度を使用する場合は株式会社JAアグリサポート、咲倉ナーセリーなど認定機関での研修が必要)
佐久間さん:私もこちらの研修を利用しました。ここで知り合った農家さんと今も付き合いがあり、いろんな情報を教えてもらっています。
⑤青年等就農計画の策定
堀越さん:青年等就農計画とは、認定新規就農者になりたい人が申請できる制度です。原則45歳未満の新規就農者が利用でき、国の支援制度、機械導入時の支援制度、施設建築の支援制度などを受けられます。5年後の農業について、営農品目や面積、収支などの計画を立てる必要があります。また、45歳以上の就農者には認定農業者制度があります。(年齢制限なし)
いずれも研修を経て申請書を書くと申請が通りやすいですね。書類作成のサポートもありますので、まずはご相談ください。
──研修期間中の研修生の収入はありますか?
堀越さん:国が行っている就農準備資金というものがあります。1~2年間で、1年あたり150万円受け取れます。また、農業法人に雇用されながら研修する場合は時給900~1,000円ほどもらえます。
──就農までにどのくらいの資金が必要ですか?
堀越さん:農地の取得、機械の導入などによって費用も変わります。お金はあればあるだけ良いですが、県や国、市町村が独自で行っている支援制度が複数あるので調べておくと良いでしょう。
──その土地での生産実績のない作物でも申請は通りますか?販路としてネットも認めてもらえるのでしょうか?
堀越さん:実現可能かどうかが判断基準になります。販売先は明確にしてもらう必要があ理、売れる金額などの根拠があれば認定を受けることは可能です。
⑥就農に必要なものの確保
堀越さん:住む場所、農地(購入、賃貸借)、パイプハウス(作物による)、トラクターや耕運機、運搬用車、草刈機、肥料やネットなどの資材、畜舎など。やりたいことに合わせた準備が必要となってきます。また、農業に必要なスキルは下記のとおりです。
・栽培や生産するための知識(土壌管理、肥料づくり、各機械の操作技術、病害虫対策、農薬、自然と向き合う、効率化を図るためのアイデア)
・マネジメント能力(段取り、栽培管理や労働管理、情報収集、コミュニケーション)
・根気強く続ける力(天候不順、災害、害虫、病気)
・判断能力
・コミュニケーション能力(近隣農家、卸先、機械メーカーなど)
・好奇心と探究心
⑦就農
たむら移住相談室にて、就農のサポート窓口や空き家窓口などにつなげることもできます。田村市就農サポートや支援事業一覧、補助金制度などを上手に活用しましょう。
実際に就農研修を経て農業に従事した佐久間さんのモデルケース
二十歳に上京し、飲食店で働いていた佐久間さん。コロナで打撃を受け収入が下っていた頃、高齢の農家が離農して農家が減っているという話を地元で聞き、この年齢で農業をやるのも楽しいかもしれないと思いUターン。地元の農業離れを阻止し、農業の楽しさに気づいてもらい、若い人が就農するときにサポートをしながら地域を盛り上げたいというビジョンを持ちながら、作付けに向けて準備中です。そんな彼の就農までの行程についてお聞きしました。
①就農相談
佐久間さん:10月に地元に帰ってきて就農相談を受けました。4月に研修開始し、1年半研修。相談回数は3回でした。研修開始はもっと早い予定だったが、地震の影響で遅れました。相談してからはスムーズに進み、作りたい作物についても相談に乗ってもらいました。
②研修
堀越さん:就農時期から逆算して決めていきます。研修前に、いつ就農するか、育てる作物、いつから研修を受けたいかを決めてもらいます。そこから相談をして農家さんと調整してマッチング。雇用研修、国の制度(就農準備資金)を利用して研修する方法もあります。
佐久間さん:私が経験した研修は下記のとおりです。
1年目:トマトメインの農家。多品目栽培でブロッコリー、とうもろこしなども栽培。作物の生育管理、機械の使い方、マルチの貼り方、農薬の使い方を学ぶ。夏の暑い時期は体力的にキツく、朝早くに初めてお昼を長めに休む、夕方に再開などの時間の使い方も教えていただいた。
2年目:きゅうり農家。朝5時出勤。一人でやっても終わらないほどの仕事量だったため、スタッフを早めに帰らせるためのタイムマネジメント能力を学ぶ。売り先での契約の仕方、経営に関することを多く学んだ。
使用している農薬なども知れたので、ネットで費用を調べて経費についても学べました。覚えることが多いので、後からメモを取って見直して覚えていました。
新規就農に向けて一歩踏み出したい!そう思ったら、まずは現地で体験してみよう!
たむら暮らしでは、農家さんと話ができる中長期体験トライアル農業や個別ツアーなどを開催しております。楽しく農業を体験して、新規就農に向けた具体的なイメージを固めてみましょう!また、田村市近辺の市町村で現地見学祭や就業体験ができる「田村地域就農支援プロジェクト」なども開催。詳しくはホームページにてご確認ください。
今回もたくさんの方にご参加いただきました。参加者からは、
・就農するにも何から手をつけてればよいか全くわからない状況で、概要と方向性を説明いただけてとてもありがたかった
・自治体の農政担当者だからこその情報を聞くことができたのでありがたかった
・農家になるための道筋がわかり、就農も選択肢の一つだと思えた
との感想をいただきました。
たむら暮らしでは今後も、田舎での暮らしを満喫されている方や活躍する地域プレーヤーをゲストにお迎えしてオンラインイベントを行います。ぜひ今後の情報もチェックしてみてください。