【開催報告】福島県田村市オンライントークイベント「山と森とWell-Being 仕事編」

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2022年8月19日(金)に、「山や森の中で生活・仕事をすること」をテーマにゲストからお話を伺うオンライントークイベントを開催しました。
今回はフォレストクリエイト桑原代表の「桑原直人さん」、田村森林組合の「古瀬希啓さん」の2名をゲストにお招きして、林業や自然の中での仕事のリアルと、Well-Beingな生き方について、仕事面に重きを置いてお話ししていただきました。

ゲスト①:桑原直人さん(フォレストクリエイト桑原代表)
※第1回、第2回参加
林業の担い手育成を目的とした助成制度「緑の雇用」を活用し、20歳から林業に従事し、今年で20年目に突入。
2015年に独立し、現在は森林を所有する個人からの委託業務を中心に、調査業務から、伐木、搬出、丸太運材、特殊伐採も行っている。現在、自身が子ども時代に遊び育った裏山を購入し、一部を住宅用地として自宅を建て、家族4人で自然と共生した生活を送っている。

ゲスト②:古瀬希啓さん(田村森林組合所属) 
現在28歳。埼玉県出身。横浜市の動物園の飼育員として働いていたが、コロナ渦の影響で職を失い、転職をせざるを得ない状況になってしまった。そんな中、電車の中吊りに林業説明会の広告が目に留まり、興味が湧いたことがきっかけとなり、説明会に足を運んだ。説明会の担当者の人柄にも惹かれ、田村森林組合とのご縁も重なり、移住・林業従事を決意した。
林業や田村市の豊かな自然に触れることで、公私ともに充実した”たむら暮らし”を送っている。


※Well-Beingとは……
健康で安心でき、満足できる生活状態であるという状況を示す言葉。直訳すると『幸福』。身体的にも精神的にも社会的にも、全てが満たされている状態を指す言葉として、WHOなどでよく使用されている。

自然とともに生きる『林業』という仕事

経歴も出身も年齢も違う、桑原さんと古瀬さん。そんなお二人がどうして『林業』の道に進んだのか、また、どのようにして充実したWell-Beingな生活を送っているのかについて、詳しくお話を伺いました。


─林業を選んだ理由について教えてください。
桑原さん:林業という仕事が、最初から頭にあったわけではありませんでした。実家の家業である建築業に携わっているときに、図面の通りに仕事をしていくことに窮屈さを感じたのです。自分自身がもともと自由な気質だったので、想像力を働かせられないというが合ってなかったのでしょうね。だからこそ、一次産業として自由に仕事ができる『林業』に惹かれたのです。自由を求めて林業の世界に入りました。

古瀬さん:もともと動物や自然が好きだったので飼育員という職につきましたが、このコロナ禍の中で動物園も不況の煽りを受けて失業しました。その時に、祖母の家がある田村市に引っ越そうと考えていた時、近くに田村森林組合があることを知りました。もともと林業をテーマにした「WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~」という映画が大好きだったため、そこで林業を選びました。


─林業の魅力といいところとは?
桑原さん:完成図がなく、数年後を想像してやる仕事であるため自由度が高いところです。それと、自然の中で作業を行うので、閉塞感がなく開放感がありますね。人が造林や植林などで山を作る手伝いはしますが、基本的には苗木に頑張ってもらうという自然に任せるというところも魅力の一つです。ともに成長しているのだと感じられます。それと私は組織に属していないので、時間管理もリスク回避も自由にできるのもいいですね。

古瀬さん:私は自然が大好きなので、自然の中で仕事ができることが一番の魅力です。それと、山に入ったときに雄大な景色を眺めたり樹々に囲まれたりしながらお昼を自然の中で食べるのが最高です。そういう日常を過ごせるのは、本当に魅力的だと思います。それと、植林して伐採するまで山が成長するまで20~30年はかかります。もっと立派な木材にするには50~100年かかることも。長いスパンを要して山を相手にするというのも、この仕事ならではのやりがいですね。

桑原さん:山は基本的に普遍的なものなので、100年先を想像できる仕事として、自分の子供や孫のことまで想像して仕事ができます。短いスパンで結果が見える方がいいという人もいるけれど、すぐに結果が出ないからこそ、ずっと考えていられるというところに美しさを感じます。


─林業の大変なところを教えてください。
古瀬さん:元々飼育員をやっていたので暑さ寒さについては耐性がありました。逆に、自然の中だからこそ暑さ寒さを感じられるのだと思います。自然を体感しながらできる仕事です。

桑原さん:二十年林業をやっていますが、全く苦労を感じません!伐採の時などは風の力を利用して木を倒すので、むしろ自然に助けられていますね。暑い日に大雨が降ってくれたら逆に涼しくなるし、寒いからこそ焚火の暖かさをより感じられるのだと感じています。年齢を重ねたことで疲れが抜けにくくなったかもしれませんが、それは林業だからではなく年齢の問題ですね。


─女性で林業に携わっている人もいますか?
桑原さん:林業を個人事業主でやっている女性もいます。本人的には特に大変ではなさそうです。林業は現代化が進んでいるので、機械を使えば問題ないと思います。ただ、すごい規模の山を歩き回るのは大変かも。安全に気を遣う仕事なので、体力より頭を使う機会の方が多いかもしれません。

古瀬さん:うちの事務所にも女性はいますが、現場だと体力的には厳しい面もあるかもしれませんね。しかしそれは本人のモチベーションにもよると思います。大変だと思うか、やりがいだと捉えるかは、ご本人次第です。


─これまで山で大変な目にあった経験はありますか?
古瀬さん:蜂です。入社2~3ヶ月の時に入山したら、1日に二回刺されました。アナフィラキシー対策で、みんな自分で薬を持ち歩いています。

桑原さん:田村市は奥深い山ではなく中山間なので、獣に追われたりしたことはないですね。虫も基本は敵対心を持って近づいてはきません。蚊も森林香という虫を寄せ付けなくする蚊取り線香を使ってます。獣よけの蚊取り線香もあるんですよ。


─林業をやっていて良かったことは?
古瀬さん:以前は生き物相手だったので、動物の出産などがあったら昼夜休日問わず出勤しなくてはなりませんでした。しかし今はカレンダー通りのお休みで、基本定時上がりなので自分の時間が持てます。それと、森林組合は木を切るだけでなく、小学校で木工クラフト教室を開いたりしながら森林の役割を子供たちに教えてあげるという仕事もあります。森の中だけでなく子供達に教えられるという仕事に、やりがい感じています。

桑原さん:とにかく林業は最高です。二十年やってても飽きないし、子供や妻など家族に誇れる仕事だと思います。楽しく仕事をできて、そのお金で生活できています。まだまだチャレンジできる業界であり、苗木一つ植えるにしても業務効率を改善させることもできます。時間軸が長いが故に、失敗しても軌道修正ができますし、自然が普遍なものだからこそ、そこに行けばその木に会えるというのもいいですね。

『林業』をやるのにぴったりな田村市。

中山間地域である田村市。この環境は林業をやる上で、とても適した状況だと桑原さんは語ってくださいました。

「その山の持ち主の家が山のすぐ麓にある(家の裏に山がある)ので、山での作業をするためインフラが整っている状態で作業ができます。伐採した木材などを運び出すための費用もそんなにはかかりません。山の中腹に家が点在していて、道路もしっかりしています。個人が山を持っていることが多いので森林での困りごとが多く、それが仕事につながることも多々あります。林業をやりやすい地域だと思います」

長い時間をかけて試行錯誤しながら自然を育て、次世代につないでいく『林業』。

山林を育てるために人間が手を入れ、育った山々から恩恵をいただく。太古の昔から連綿と続いてきた『自然との共存』を改めて感じられる貴重なお話でした。

今回も多くの皆様にご参加いただきました。参加者からは、

・自分にとって新しい情報が聞けました
・インフラが森林の近くにあるために林業がしやすいなど、しっかりと田村市の特徴を述べられていてわかりやすかったです
・全く知らない状態でしたが、林業のことから田村市のことまで楽しく知れたので良かったです

とのご感想をいただきました。

たむら移住相談室では今後も、田舎での暮らしを満喫されている方や活躍する地域プレーヤーをゲストにお迎えしてオンラインイベントを行います。ぜひ今後の情報もチェックしてみてください。

たむらぐらし